手首から流るるは、紅の血。
―――おまえだけの、ものになる。
「これで」
真っ白なシーツに血が染み込む。
キラリ、と光る鋭いナイフを右手に握るは
狂気的なほどに陶酔した笑みを浮かべる紫電の瞳。
―――刻み付けて、やれる。
目が覚めるといつも通り手首に包帯が巻かれていた。
ほどいてみるとやはり、真新しい傷があった。
カウンセリングを始めてからずっとこうだ。
朝起きて、右手首にタオルが巻かれていて、ほどいてみると新しい傷がある。
傷の具合はいつも脈を横に切られていたが、深さは日によって違った。
浅い時もあれば、深く斬られている時もある。
今日は浅い方だった。
トーヤに相談して、一時期はアリサさんとテディに頼んで腕を縛り付けてもらったりしていたが、無駄だった。
朝起きると腕は解かれていて、傷があった。
多分、別の自分の仕業だろう。
別の自分が傷つけて、別の自分が手当てしてくれている。
何だか、変な気分だ。
自分に殺されようとしてるのに、恐くない。
それどころか、むしろ……。
「そろそろ下に行かないと」
ベッドから起き上がり、いつものように大き目の服で傷を隠す。
半そでなんて着られなかった。
着れば傷を見られてしまう。
皆を心配させてしまう。
それだけは嫌だった。
「いってきます」
誰もいない部屋にそう告げて下へ急いだ。
END
亮祐:管理人です。何故副題が“ショウ”なのかというとこの手首の傷は別人格のショウの仕業だからです。もう少ししたらちゃんと出したいですね。次回はアレフの任務イベントでの出来事です。
ではこの辺で。
BGM:フランス組曲第1番 ニ短調 3.サラバンド/作曲バッハ midiファイル作成「
トオリヌケデキマス」
命の儚さ/「煉獄庭園」