EMPTY A CONCEPTION

the stomach a sound  1

モドル | トジル | ススム

 それは、青年と少年の間ぐらいの声。
 薄れる意識の中、見えるその姿。

「悪いけど、少し眠っててよ。あんたが目ェ覚めるくらいには終わるから」

 ―――どうして

「心配しなくても、あんたが目覚めたときには、亮は元気になってるからさ」

 アレフを見下ろす、美しい紫電の瞳。

 ―――どうして
 ―――元気になるんだ?





 仕事帰りにそれを見かけたのは偶然だった。

「最初はただのケンカだったそうよ」
「それがエスカレートして相手をグサリ」
「ケンカの原因はまだ不明だってよ」
「ひでぇもんだな」

 ラ・ルナの前に野次馬が集まっている。
 土や壁は血で赤く染まっていた。
 そして、自警団員に担架で運ばれていく、血塗られた冷たい骸。
 担架からだらりと垂れた手がそれが本物だということを示している。
 亮に抱きかかえられているテディが震えていた。

「ボク、夢に見そうっス……」
「ああ、そう、だ、ね…………」

 死体を目のあたりにした所為か、亮の様子も少しおかしい。

「おい、大丈夫か?」
「大丈夫っスか? 亮さん」
「大丈夫……。ちょっと、頭、が……」

 そのまま、亮は黙ってしまった。
 そして、それが聞こえた。

 周り野野次馬達にも聞こえた、腹の音。
 亮からのものだった。

「どうしたんだよ? りょ…」

 しかも呆気に取られて亮の肩に手を置くとガバッ、と抱きついてきた。

「りょ、亮っ!?」
「どうしたんスか!?」

 “こんな公衆面前、しかも野次馬の目の前で”と慌てていると亮が言った。

「リトル、おなかすいた……」

 ビシ、と固まってしまった。

 ―――まずい。しかもこんな人込みの中で……

 とにかく、今はここを離れることが先決だ。
 だがこういう時に限って面倒な事が起こる。

「何やってるんだ? 貴様ら」

 その予感が的中した。
 来なくてもいいのにアルベルトが近付いて来た。

「べっ、別にっ。なあっ!」
「そうっス!」
「ん〜……」
「それのドコが別になんだ?」

 やはり“別に”で通すには無理があった。
 15・6くらいの少年がいい年した男に抱きついていれば“別に”で済まされるわけがない。
 例え中身がリトルという子どもの人格だとしても、周りには亮にしか見えないのだから。

「アレフおにいちゃん、リトルおなかすいたー……」
「リトル……?」
「「わーーーーっ!!!」」

 思わずテディともども大声で妨害した。

 ―――早く逃げないと……

 早く。
 早く。

「何やってるんだ? アレフ」

 後ろから聞きなれた声がした。
 振り向いてみると、そこにはシーラと共に別の仕事へ行っていたエルがいた。

「こんなトコで大声なんか……」
「遅ェじゃねーか、エルっ!」

 まさしく、天の助けだ。

「仕事が終ったら三人で飯でも食おうって約束してただろっ!? これじゃあラ・ルナは無理だからさくら亭へ行こうぜっ!」
「はあ? あんた何いって……」
「ほら、急ごうぜっ!」
「早く行くっス!!」

 アレフはエルと愛藍の腕を掴むと大急ぎで走り去ってしまった。

「何だったんだ? いったい……」

 残されたアルベルトはただ首を傾げるだけだった。





 


亮祐:管理人です。修正してもやはりあまりグロくなりませんでした。玉砕です。
翔:そんなんばっかだな。
亮祐:次回はさくら亭です。いちおー、シリアスで……。


BGM:命の儚さ/「煉獄庭園」

モドル | トジル | ススム

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