ジョートショップではアレフと五月が話をしながらアリサがいれてくれた紅茶を飲んでいた。
「つまり、おまえはとある名家の出だったんだな?」
「まあ、そんなトコかな」
五月が返事をして、紅茶を一口飲む。
「ちょっと事情で家を出て、会いたい奴がいたからエンフィールドに来たけどちょっとしたことで記憶を失いましたとさ。ちゃんちゃん♪」
「明るくいえるか?フツー……」
明るく言い切った五月にアレフが溜息を吐いた。
「――でその会いたい奴ってのは?」
「ああ、それは……」
―――バアンッ!
続きを話そうとしたその時、ジョートショップの扉が勢いよく開かれた。
得意の槍を持ったアルベルトが立ちはだかっている。
「五月っ! 今日こそ決着をつけさせてもらうっ!」
「おまえも全然変わってないなー、アルベルト」
「うるさいっ!」
「そんなことより、アレフから聞いたぜ? おまえ、アリサさんにフラれたんだってなぁ?」
「―――っ!!」
五月の言葉にアルベルトの顔が真っ赤になった。
「よく考えてみろよ。おまえなんかがアリサさんの死んだ旦那さんに適うワケがないだろ」
「このやろッ……!」
完璧にキれたアルベルトは五月に向かって槍を振り下ろす。
けれど五月はそれを足で受け止めていた。
鈍い音がその場に響く。
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
槍が壁に突き刺さっている。
そして槍の持ち主のアルベルトがうつ伏せで倒れていた。
「な、なんで……」
アルベルト自身も何が起こったのか解らなかった。
その時、誰かが扉を開けたことを知らせるベルの音が鳴った。
「あ〜あ、間に合わなかった」
「アルベルトさん、何やってるの?」
陸月とトリーシャがそこにいた。
「もしかして五月さんとケンカして負けちゃったの? しょうがないな〜」
「ト、トリーシャちゃん……」
「ダメじゃないか、アル」
呆然としているアルベルトに陸月が近付く。
「いくら実力はあるからってアルが勝てるワケないよ。その人は神月流第12代目当主継承者の第一候補だったんだから」
相変わらずの笑顔で陸月が言い放った。
まるで、あたかも当然のように
「そうでしょ?五月さん」
その瞳が五月を捕えた。
「神月流だって……!?」
「知ってるのか? リサ」
「知ってるどころの話じゃないよっ!神月流はあらゆる武具をあつかい、全大陸に存在する流派の元締め。つまりそこの当主となれば世界最強に値するのさ」
「マジかよっ!?」
世界最強候補だったと知ったアレフが思わず二人を凝視する。
五月と陸月はお互いを見ていた。
「陸、月……?」
「うん、そうだよ」
名を訊ねる五月に陸月は笑んでいた。
「陸月っ……」
五月が陸月の両手をぎゅっと握り締める。
けれど次の瞬間、雰囲気が壊れた。
「久しぶりだねv さっちゃ……」
言い切る前に、正拳突きを喰らわしたから。
「昔のアダ名で呼ぶなっ……!!!」
「あいかわらず口より先に手が出ちゃうんだね、さっちゃん……v」
胸倉を掴む五月に陸月が血を吐きながら笑う。
―――なんなんだ、この二人…
そんな二人を見て三人はそう思わずにはいられなかった。
亮祐:管理人です。正拳突きくらわせちゃったよ……。ではこの次で。
BGM:『空も飛べるはず』/スピッツ