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エンフィールドの治安を守る自警団。
自警団事務所ではアルベルトが珍しくデスクワークの仕事をしていた。
けれどその体が、わなわなと震え出す。
「だぁーーーーっっ!!!」
やはり耐え切れず、ちゃぶ台返しをかましていた。
「ひー-まーーだーーっっ!!!」
「うるさいよ、アルv」
退屈に吼えるアルベルトが笑顔の青年に踏み潰された。
第三部隊隊長陸月だった。
足を退けてやり、うつ伏せのアルベルトを覗き込むように座り込む。
「いくらヒマだからってちゃぶ台返しで部屋をメチャクチャにした挙句、事務所中に響くほどの大声を上げるのはどうかと思うけど?」
「けどよ……」
アルベルトがその体勢のまま見上げる。
「なんで第一部隊の俺がデスクワークなんざやらなきゃならねぇんだっ!!」
「しょうがないよ。僕が臨時助っ人としてアルを指名したんだから。仕方ないでしょ?」
真上の陸月は極上の笑みを浮かべていた。
こうなってはもう敵わない。
逆らったら最後。
何をされるか解ったものではない。
「さ、片付けようv」
「ちくしょー……」
二人が倒れた机やらに手を掛けようとしたその時、先程のアルベルトの大声に負けないほどの大声が響いてきた。
「アルベルトさーんっ!ビッグニュース、ビッグニュースーーーーッッ!!」
現れたのはトリーシャだった。
興奮する彼女にアルベルトが尋ねた。
「ど、どうしたんだい? トリーシャちゃん?」
「だからビッグニュースなんだって! あのね!」
呼吸を落ち着かせてトリーシャがビッグニュースを話した。
「五月さんが帰ってきたのっ!」
「なんだってえっ!?」
アルベルトがまた大声を上げた。
旅に出ていたライバルがやっと帰ってきた。
大声を上げるのは無理もなかった。
事情を知らない陸月がトリーシャに訊ねた。
「五月…?」
「ジョートショップに居候してた人だよ。ほら、二年前の事件で自分の容疑を晴らしたアルベルトさんのライバルの」
「ああ」
納得した陸月が頷いた。
―――五月って名前だったんだ
陸月は五月との面接が全くなかった。
事件の時も任務でエンフィールドから離れていたし、皆からも“ジョートショップに居候していた記憶喪失の青年”としか聞いていなかった。
名を聞くのも今日が初めてだ。
けれど、その名は知っていた。
「それから記憶の方も戻ったみたいだよ」
「こうしちゃいられんっ! 二年ぶりに決着をつけねぇとっ!!」
「あ、それやめておいた方が……」
意気込むアルベルトを陸月が止めようとしたが、最後まで言う前に部屋から出て行った。
その場に陸月とトリーシャが残った。
「あ~あ、行っちゃった」
「……陸月さん、もしかして五月さんのこと知ってるの?」
「ん~、どうかな?もしかしたら同性同名かもしれないし」
答えながら陸月は手早く周りを片付けていく。
「とにかく、確認してみないとね」
楽しそうに、何時もの笑みを浮かべていた。
亮祐:管理人です。普段の陸月くんは好青年なんだけどなぁ…。一体、彼は何を知ってるんでしょう?さて、舞台はまたジョートショップへ戻ります。
ではこの次で。
BGM:『空も飛べるはず』/スピッツ