Everlasting a Conception

帰るべき街  2

モドル | トジル | ススム

「たいくつだなぁ〜……」

 いつものように遊びにきたアレフはテーブルにぐったりと項垂れていた。
 エンフィールドにあるジョートショップ。

「アレフさん、いつまでだれてる気なのぉ?」
「五月病にでもなっちまったのかい?」
「あ〜、それ当たってるかも……」

 同じく遊びにきていたトリーシャとリサに何を言われてもアレフはだれたままだ。
 二人が“どういう意味だ?”と思っていると

「あ〜、五月に会いてぇ〜」
「――って、“五月に会いたい病”って意味かいッ!」

 ぼやくアレフにリサのつっこみが華麗に命中した。
 五月に会いたいといってもそれは無理な話だ。
 五月は今、ジョートショップの女主人アリサの目を治す薬を探す旅に出ている。
 連絡の一つも寄こさないので今何処でどうしてるかさえも分からない。
 そんな状態で五月に会いたいなんて無理だった。

「あいかわらずっスね、アレフさん……」
「今頃、ドコで何してるんだろうね、五月さん……」

 テディとトリーシャが呟いたその時、誰かが扉を開けたことを知らせるベルの音が鳴った。
 いち早くアリサが反応する。

「いらっしゃ……」

 振り向いたアリサが皆の紅茶を注いだティーカップを乗せたトレイを落とした。
 扉の前に、見知った青年が立っていたから。
 “何事か”と思い皆も扉を見る。

「おっす」

 少し長めの茶色い髪が揺れていた。
 緑色の瞳がこちらを見ている。

「久しぶり」

 会いたがった五月がそこにいた。
 アリサが恐る恐る五月の元へ近付いた。

「五月クン、なの……?」
「はい。ただいま帰りました」
「お帰りなさいっスっ!」

 アリサの肩に乗るテディも五月の帰還を喜んでいる。
 信じられなかった。

「いつ戻ってきたのっ!?」
「ついさっき。んですぐここに直行したワケ。リサも久しぶり」
「そういうトコはあいかわらずだねぇ、ボウヤ」

 誰よりも五月の帰郷を願っていたのに今一つ実感が湧かない。

「よ、アレフ。元気だったか?」

 けど、目の前に居るのは間違いなく五月本人。

「さっ…五月ーーーっっ!!!」

 久しぶりの五月にアレフは抱きつこうと突進する。
 けれど、五月のファイナルストライク並のアッパーが炸裂した。

「人様っていうか俺にすぐ抱きつこうとするクセもあいかわらずだな」
「は、はひ……」

 笑顔を浮かべる五月の元、アレフは血だまりに沈んでいた。

「前よりも凶暴になったねぇ、ボウヤ……」
「そりゃ、記憶が戻って本来の性格に戻ったワケだから……」
「ええっ!? 五月さん記憶が戻ったのっ!?」

 衝撃の事実に街中に聞こえるほど大声で叫んだのはトリーシャだった。
 旅に出た五月が一年ちょっとぶりに戻ってきただけでなく、失っていた記憶を取り戻したなんて。
 これはエンフィールドのビッグニュースだ。

「こうしちゃいられないよっ! ボクみんなにこのこと伝えてくるからっ!!」
「おう、いってらっしゃ〜い」

 駆け出していくトリーシャに五月はひらひらと手を振る。
 復活したアレフが声をかけた。

「なあ、『記憶が戻った』って、本当か……?」
「ああ。つっても完璧ってワケじゃないけどさ。なんなら俺の昔話でも聞く?」
「喜んでっ!」

 嬉しさと期待でビシッと手を挙げていた。





 


亮祐:管理人です。凶暴の一言につきますな。リサもリサでツッコミ女王です。次は2ndくんとアル。ではこの次で。


BGM:『空も飛べるはず』/スピッツ

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