クラウド医院やフェニックス美術館、マリアの家等があるノースロットフェニックス通り。
赤い屋根の一軒家。
そこが理奈の親友エミーリエ・ベルガー、通称ミリィの家だ。
4人は玄関口でミリィの母という人と話をしていた。
話しによるとミリィはここ一週間、家に帰っていないというのだ。
その情報に理奈は一瞬肩を震わせた。
「いつものようにローズレイクへ行ってそれっきりなの」
母親は青い顔で額に手をやっている。
一人娘が行方不明で気が気でないのだろう。
もしかしたら殆ど寝ていないのかもしれない。
「ところで、あなた方は……?」
「―――」
理奈は口を開こうとしなかった。
かわりにアレフが説明をする。
「彼女は理奈といって、エミーリエさんの友人です。ご両親の実家に行ってて、エンフィールドに戻ってきたら会おうと約束してたんです。俺と亮と里矢ちゃんは付き添いで……」
そこまで言うと、母親は顔を曇らせた。
「―――亮? 亮って盗難事件の……」
―――しまった!
アレフは慌てて己の口を噤んだがもう遅かった。
母親は怪訝そうに顔を歪ませている。
「どうしてそんな人がうちのミリィと? まさか、あなたがミリィを……?」
「まっ……俺たちはただ付き添いで……」
「この人盗難犯なんでしょうっ!? 美術館のっ! 犯罪者って時点で怪しいものだわっ!!」
「亮は犯罪者なんかじゃ……!」
「それにその瞳の色、こんな色の瞳なんて見たこともないっ! まるでっ……」
母親はそこで一度切って亮を憎悪の目で睨み付けた。
「まるで化物だわっ!!」
母親の言葉に亮は顔を伏せたので表情はよく解らなかった。
アレフは流石にこの言葉は我慢が出来なかった。
「待てよっ! いくらなんでもそんないい方……!」
「―――最後に一つだけ」
それを静かな口調で制したのは理奈だ。
「ミリィの捜索届けはもう出してるの?」
「え、ええ……」
「そう」
それだけ聞くと理奈は亮と里矢の手首を掴むんで、さっさと行こうとミリィの母親に背を向ける。
慌てて亮はそれを制した。
まだ他にも聞きだせることがあるかもしれなかったから。
「まだ。聞けることが……」
「もういいの。それに―――」
理奈はそこで一度きり、首だけ後ろへ振り向き目を細めて母親を見る。
その瞳はとても冷ややかで。
「血も繋がってない娘の心配してるフリだけでなく、いなくなって喜んでるような女に、これ以上きくことなんてないもの」
その途端、ミリィの母親がビクリと反応した。
顔色が先程以上に青くなり、ブルブルと震えている。
理奈は鼻で息をして亮と里矢を連れて行く。
アレフもその後を追いかけた。
「どうして……どう、して……?」
最後に、母親の震える声がした。
四人は南へ向かって歩いていく。
アレフの脳裏には先程の言葉が繰り返し響いていた。
『血も繋がってない娘の心配してるフリだけでなく、いなくなって喜んでるような女に、これ以上きくことなんてないもの』
『どうして……どう、して……?』
理奈が言ってた事はどうやら本当らしかった。
どうして理奈がそれを知っていたのだろう。
話をした少しの間、あの母親からはそんなそぶりは全く感じられなかった。
まさか、ミリィ本人が知っていて、前に聞いたことがあるのだろうか。
だとすれば理奈が知っていても不思議ではない。
それに、それ以上に気になることがあった。
「なぁ、これからドコに行くつもりなんだ……?」
「―――自警団事務所。それ以外、エミリーに繋がる手がかりはないし。もしかしたらミリィに関する最新情報も……」
「それだったら、亮が連れて行かない方が……」
その途端、理奈の足がピタリと止まった。
亮は現在仮釈放の身。
仮釈放といっても亮の事を知らない者にとっては犯罪者だ。
自警団に行けば確実にひと悶着起きるだろう。
「俺は別に構わんぞ」
だが当の本人は平然としていた。
元々自分は無実なのだから言いたい奴には好きなだけ言わせておけば言いのだと。
「けど……」
「アレフ」
制すように名を言う。
「大丈夫。なんとかなる」
にっと笑って、先頭を歩き出す。
あまりの根拠のない自信に呆れて何も言えなかった。
亮祐:管理人の亮祐です。今回は理奈の親友エミーリエ・ベルガーの母との接触でした。エミリー母の
発言から察したと思いますがこの世界では紫電の瞳というのはまずないのですよ。その昔、日本では遺伝子異常なんかで色素が薄く青い目の者が迫害されていたのと同じですな。悠久キャラで紫目のいたぞという人、それは紫と紫電は別物です!ではこの辺で失礼を。
BGM
日光浴/「TAM Music Factory」
無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータ ソナタ第1番 4.PRESTO/作曲バッハ midiファイル作成「トオリヌケデキマス」
2声のインヴェンション第2番/作曲バッハ midiファイル作成「トオリヌケデキマス」