銀色の髪が風に揺れている。
―――顔が、悲しげに歪んでいた。
「ごめんな」
―――聞いたことのある声だった。
「あ、気付かれました?」
トリーシャが最初に見たものはフサの顔と石で出来た天井だった。
周りを見回してみるかぎり、どうやらここは岩で出来た牢屋らしい。
「ここは……」
「よかった〜。なかなか目覚めないんで心配してたんですよ?」
「心配する必要はないっていった筈だけど」
驚いてトリーシャは声がした方に振り向いた。
奥には3人の女性がいる。
「こっちも一応医者だから、誤診断するつもりはないんだけど?」
そう言うその人は灰色の髪と目、けだるそうな雰囲気に眼鏡。
エルくらいの年頃だが女にしては結構高身長で、左手首に瞳と同じ色をしたブレスレット。
タキシードのような服を着ており、声色も中性的だ。
もう一人はエルと同じくらいの年頃の、自分と同じ茶色の髪と碧の目の女。
東国の着物のような、洋服のような、不思議な服を着用し、首には瞳と同じ色のネックレス。
機嫌が悪いのか仏頂面だ。
そして最後の一人はこちらもエルと同じくらいの年頃の、屋敷に仕える侍女のような服を着た黒い髪の女。
俯いているのでその顔は解らない。
「えと……」
「あたしは聖。こっちの不機嫌な子が理奈で、黙ってる子が里矢。君は?」
「トリーシャです……」
「トリーシャ?」
それを聞いた聖はまじまじとトリーシャを見つめてくる。
「そっか……。トリーシャか……」
納得したように頷いた。
トリーシャは改めて辺りを見回した。
―――どうして、こんな所にいるんだろう……
自分は確か、家から飛び出して西の山へ迷い込んだ。
そして変な男を見かけた後―――
「フサに、捕まって……」
「え? 私達の一族に捕まったんですか?」
目覚めた時に見たフサが声を上げた。
「私は変な男に捕まったんですけど……」
「変な男って、もしかして眼帯してなかった?」
「はい。拘束衣のような服を着たヒャハハ笑いの男でした」
間違いなかった。
自分が見た男とフサが捕まったと言う男は同一人物だ。
自分がフサを攫ったという誤情報をフサの一族に伝えたのもその男だろう。
けれど、何故あの男は自分を陥れたんだろう。
―――あの人、ボクに謝ってた……
森であの男を見かけた時、男の顔は悲愴に歪んでいた。
そして確かに言ったのだ。
ごめんな、と。
それは、何処かで聞いたことのある声だった。
「あたし達もその男に捕まったんだけど……。トリーシャちゃん、どうして西の山に? 危険だから入っちゃ駄目っていわれてる筈だけど?」
聖が咎めるような口調で話しかけた。
「実は、お父さんとケンカして家出して……。それで……」
「あらら。関心しないなー」
「―――当然」
口を出したのは理奈だった。
「いくら仕事でも一人娘の誕生日に帰ってこないなんて、最低」
「え?」
おかしかった。
自分は家出したとは行ったが、家出した理由まではまだ口にしていなかった。
「ねぇ、ボク家出した理由話したっけ……?」
「―――」
「そんなことより、お友達が助けにきてくれたみたいだけど?」
聖が向こうを指差した。
「や〜っと着いたぜーーっ」
その先には、自称エンフィールド一のナンパ師が見えた。
「アレフさんだっ!!」
"助かった”とトリーシャは思わず檻を握り締めた。
亮祐:管理人です。アレフたちが来る直前の情景です。本当はこの前にジョートショップ面々サイドの話があったのですが、面倒になったのでそちらは削除です。
翔:そういう話はオフレコだーーー!!
亮祐:とうとうオリキャラが出て来ました。好みが分かれる話しになること必須です。ちなみに里矢が着てるメイド服は秋葉系の萌え萌え〜のようなのではなく正統なメイド服です。侍女のようなやつですね。今回、理奈が漏らした不可解な言葉。何故喧嘩の原因を知っていたのか。聖がトリーシャの名に関心を持った理由は。これにらついては後々。ところでトリーシャってシャドウと祈りと灯火の門だけでなく西の山でも接触してましたよね?
翔:曖昧なら確認しろって!!
亮祐:では続きにて!
BGM:命の儚さ/「煉獄庭園」
日光浴/「TAM Music Factory」