EMPTY A CONCEPTION

meeting  3

モドル | トジル | ススム

「ここからは別人格の話に触れようか。まずはショウだな」

 ショウ。

「この人格とは殆ど面識がないな」
「むしろ、こっちに気付いてたかも怪しいね」

 あの時の人格はどう見ても普通ではなかった。
 まるで、自分達が見えてないようだった。

「千里はあれが亮の過去に関係してるっていってたよな。どういうことだろうなぁ?」
「ボクはあの場にいなかったけど、目を抉ろうとしたって本当なの?」
「ああ」

『………ごめんね』

 あの時ショウは確かにそう言った。
 これについては情報が少なすぎる。

「ドクター、アマデウスの混乱は治ったのか?」
「わからんな。あの後一度も会っていない」
「そっか……」

『ずっと、一緒よ』

 過去、亮がそう言った相手は誰だったのだろう。

『私は彰をっ!!!』

 あの力は、一体なんだったのだろう。

「解らないといえば、守理もそうだな。あの時一度あった限りだ」
「催眠術で出て来ないんですか?」
「ああ。あまり外に出られないといっていたから、そのせいだと思うが……」

『本当よ。現に亮も、殺されかけた』

 感情のない目をした人格だった。
 冷たい目。
 まるで人形のような。

「刹那も二度の面識のみだな」

『誰にも、亮は救えない』

 あの言葉には何があるのだろう。

「夢具は……まだ一度も会っていない。おまえ達から話を聞いただけだ」

『心配しなくても、あんたが目覚めたときには、亮は元気になってるからさ』

『殺したのは亮じゃない……! 亮のせいでもない……! 亮じゃ、ない……!!』

『自分の気持ちにすら、気付いてないなんて』

 あれはどう言う事だったのだろう。

「出てくるのは千里とリトルだけだ。残りはまったく出てこん」

『亮はおじちゃんのこと大好きだったんだから』

 リカルドは本当に亮の事を知ってるいるんだろうか。

『きれーなかみ…。千里おにいちゃんが刹那ちゃんとまちがえちゃうワケだよね……』

 あれ?

『彼については、よくわかりません。リトルが見かけたことがあるくらいです
『では刹那が忠告したわワケは?』
『それもわかりません。彼とはあまり接触しないものですから』

 あれ?

 何か、変だ。
 リトルは、千里が刹那の髪の色を知っているよういったのに
 千里は、刹那をよく知らない?

 あまり接触がないのに、
 髪の色だけは知ってるって、おかしくないか?

『朝っぱらからなに迫ってんですかーーーーーーーっ!!!』

 あれがもし、
 もし、俺を髪の色が似てる刹那と間違えてたとしたら
 千里は間違いなく
 刹那を知って―――

「アレフ?」

 不思議そうに見つめる亮の声で我に返る。

「どうしたの?急にぼーっとして」
「え、あ……」

 もしかしたらまた失敗するかもしれない。
 そう思ってふと気になっていたことへと話題を変えた。

「そういえばさ! 亮、牢で何があったんだ?」
「え……」
「千里が牢であったこと話したみたいなこといってけど、何があったかは聞いてねぇからさ」
「……ごめん。オレは、覚えてない」

 亮はすまなさそうに項垂れてた。

「知っているのはフォスターさんだけだ。それを聞くためにも来てほしかったんだが…」
「お父さん、何か隠してるような感じだった……。どうして、話してくれないのかな……」
「トリーシャ……」
「それに、まだ気になることもある。まだ全く情報のないアイツだ」

『いつもアイツが聞いている。亮の中で身を潜めるようにしてじっと監視してる。アイツに隙を見せたらそれが最後。あなたたちも、そのうちに、殺されるかもしれない』

 守理はそう言っていた。
 戦利のときも聞き出そうとした途端、邪魔されてしまった。
 一番危険な人格なのかもしれない。

「この人格が亮に怪我をさせている可能性もある。初めの時といい、今といい、な」

 トーヤの言葉と眼差しに亮は右手首に触れた。
 あの下には包帯が巻かれている。
 別人格がやっているという切り傷。
 そして、昔の傷。

 両方ともその別人格がやっているのだろうか。

「そして、リトルが自分達別人格をいっていた偽者だといったことだ」
「どうしてっスか? そうなんじゃあないんスか?」
「普通交代人格は自分を独立した人間だと思いこんでるものなんだ。だから殆どの人格は「自分の方が本物だ。他の奴は分身にすぎない」と主張する。だが リトルは自分を偽者とわかっているし、千里も守理も夢具もそう主張していない」

 言われてみれば千里も守理も夢具も、一度だってそんな事をいってはいなかった。

「クラウド先生、どうしてでしょうか?」
「……記憶をなくす前に、カウンセリングを受けたことがあるのかもしれませんね。あとで医師組合に亮らしき患者を受け持った医師がいないか問いあわせてみます」

 話はこれで全てだ。
 今日出た情報と謎を書き出してみるこのようになった。

 Q.アリサとテディが見た者の正体と、亮との関連。
 A.不明。亮も覚えていないとのこと。

 Q.千里は何故急いでエンフィールドを出ようとしたか。
 A.恐らく亮の過去と関係があると思われる

 Q.目覚めた後、亮が歌った唄は。
 A.記憶を失う前に聞いた唄、もしくは作った唄。ただし、ここから亮の過去を割り出すのは不可能に等しい。

 Q.その後、手首を切ったのは。
 A.おそらくショウか刹那、守理や千里がアイツと呼ぶ人格と思われる。

 Q.亮の家族と、その行方に着いて等。
 A.解っているのは母親(名前不明)、セイという大人。兄弟と思われるリヤ、リナ、コウ。その行方は不明。外から見た状態から長い間不在と思われる。ただし、中は綺麗で荒れていなかった。そして亮は幼い頃、女の恰好をさせられていた可能性大。余談でリトルとアマデウスがいっていた「サン」と「彰」という人物が父親と兄弟ではないかと意見があったが、これについては可能性は低い。

 Q.盗難事件の犯人は。
 A.亮だったと言う証言がある以上、別人格である可能性が濃厚。千里がやったのではないかという意見もあったが、可能性は低い。

 Q.ショウについて
 A.面識は殆どなし。むしろこちらに気付いていたかも怪しい。遺体の目を抉り、亮の目を抉ろうとした行動は過去に関係あるらしい。

 Q.アマデウスについて
 A.混乱はまだ治っていない模様。それ以外については特になし。

 Q.守理について
 A.あれ以来、催眠術でも現れないため、不明。

 Q.刹那について
 A.初めのカウンセリングと、七月のカウンセリングの面識のみ。「誰にも、亮は救えない」という意味についても不明。

 Q.夢具について
 A. 八月の面識のみ。それ以外は不明。「心配しなくても、あんたが目覚めたときには、亮は元気になってるからさ」「怨むのは、亮じゃない…!亮じゃない…!怨むのは、あいつだ…!あいつをお怨め…!おまえを殺したあいつを…!」「自分の気持ちにすら、気付いてないなんて」これらの意味も不明。

 Q.リトルについて
 A.これといってなし

 Q.亮とリカルドの関連性。
 A.不明。ただしリトルがいったことから家族ぐるみの付き合いがあったらしい。

 Q.アイツについて
 A.不明。守理がいっていたころから危険な人格と思われる。

 Q.亮の毎朝の傷の件
 A.初めの時と同じくショウか刹那、守理や千里がアイツと呼ぶ人格と思われる。

 Q.リトルが自分達別人格をいっていた偽者といった件
 A.以前、カウンセリングを受けた可能性有。医師組合に亮らしき患者を受け持った医師がいないか問い合わす。

「書き出してみるとけっこうあるね……」
「わかったこと、ほとんどないね……」
「むしろ、謎の方が増えてるんじゃあないのか?」

 亮、シーラ、エルは少し沈んだ。
 情報の整理と謎の解明のための集まりだったのに、ほとんどの謎が解明されなかったばかりか更に謎が増えてしまった。

「情報が整理できただけでも幸いだな」

 こうして、情報の整理と謎の解明のの集まりは終わった。





END


亮祐:管理人です。アレフくん、やっと自分なりの推理が出来たのに発表せずまま終わる。
翔:やっぱりかっこ悪いな!!
亮祐:これが真実かどうかは後々解ります。さて、次回はどうしようか悩んでたりします。このまま先に進めるか、それとも序盤新たに追加したくなった話を書くか…。やはりここは後者でいきつつ、進めるのが妥当ですかね?ではこの辺で。


BGM:命の儚さ/「煉獄庭園」

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