EMPTY A CONCEPTION

meeting  2

モドル | トジル | ススム

「アレフ、公園でアマデウスが写真の家族を教えてくれたそうだが、その写真は持って来ているな?」
「もち!」

 トーヤに言われて懐から写真を出した。

 写真では五人が横二列になっていた。
 左から一人目の白衣を着た金髪と水色の瞳を持つ女がセイ。
 二人目の肩までの茶色のくせっ毛と紫電の瞳をもつ女が母親。
 三人目はマジックで顔を塗り潰されており、黒いローブを纏った腰までの茶色の髪だということしか解らない。
 前列には五人の子供だ。
 左から一人目の無機質な表情で侍女のような服を着た長い漆黒の髪と紫電の瞳を持つ少女がリヤ。
 二人目は後列の三番目同様顔を塗りつぶされていて、黒い服を着た長い漆黒の髪の子供という事しか解らない。
 三人目の可愛らしい服を着た長い漆黒の髪と紫電の瞳の子供が亮本人。
 四人目のいかにもやんちゃそうな服を着た長めの漆黒の髪と両目に包帯を巻いている少年がコウ。
 五人目の不思議な服(この間図書館で調べた所によると、この服は着物と言う東国の服に似ているらしい)を着た長めの茶色の髪と緑の瞳を持つ少女がリナだ。

「――ちょっと待った。アレフ、これが亮だとするとどう考えてもおかしいんだけど……」
「あ……」

 エルの言葉でアレフも気付いた。
 アマデウスが亮だと言っていた子供はどう見ても女の子だった。

「確かに亮の顔だけど、女だよなぁ……」
「隣りの消されてる方が亮なんじゃあないのか?」
「あれじゃない? 似合うからとか、女の子が欲しかったからとかでよく幼い頃女の子の恰好させられてたって話。学園にそうだったって人、何人かいるよ」
「まあ、その可能性も、あるな……」
「それにしても似合うわね、亮クン」
「今でも絶対似合うと思うっスよ……」
「というより、違和感なさそう……」
「シーラまで……」

 好き勝手言う皆に亮はちょっと泣きたくなった。
 とりあえず女の子の方が亮ということになった。

「これが亮だとすると、大人が父親で子供が兄弟。――と、考えるのが妥当だろうな」

 トーヤが見ても誰が見ても、これは家族写真だ。
 そう考えるのが普通だった。

「どうして、顔消しちゃったのかな?」

 トリーシャが首をかしげる。
 よっぽどな事がない限り写ってる家族にそんな事はしないだろう。
 考えられるのはこの二人の事で嫌な事があったか。

 もしくは

 二人が、死んだか―――。

「そうだよ! そう考えれば説明がつくっ!」

 いきなり立ち上がったことで皆は驚いた。

「この男がリトルが教えてくれた亮の父親「サン」だとしたらアマデウスがいってたことも説明がつくんだってっ!!」

『思い出していたの。あの時のこと。散が、死んでしまった時のこと……』

「あの時も言ったが、父親を名で言う子供はそういないと思うが?」
「けど、そう考えれば彰のことも説明がつくんだって! あんな顔で「ずっと一緒よ」なんてそう簡単にいわねーだろっ!!」

 写真の子供が彰だとしたら、説明がつく。

『ずっと、一緒よ』

 あんな顔で、よっぽどの相手でなければ言えない筈だ。

 まるで、愛する男に告げるような―――。

「では聞くが、仮に彰がその写真の子供だとしたら、何故アレフと間違えた?」
「それは……」

 写真に写っている子供の顔は解らないが、それでも黒髪だと言う事は解る。
 どう見たって銀髪のアレフと見間違えるのは少々無理があった。
 反論できず椅子に座った。
 その様子にトリーシャは違和感を感じた。
 幾らなんでもムキになりすぎている。

「と、とにかく、写真のことはここまでにしようよ。まだまだいっぱいあるんだから」

 そう。情報や謎はまだたくさんある。
 アレフは気持ちを押さえて、次の話題を話し合った。

「美術館の盗難事件の犯人って、本当にオレなのかな……」
「見た者全員がおまえだといっている以上、別人格である可能性が濃厚だろうな……」
「正直、それを一番聞き出したいよね。記憶もそうだけど、今は」

 ふと、亮は思ったことを口にする。

「そうだとしたら、別人格はどうしてそんなことを……?」

 美術品を盗む理由として一番考えられるのはやはり金だろう。
 だが何か違うような気がする。
 アレフは気づいた事があった。

「なあ、ドクター。千里はここから出ようとしたよな?」
「ああ」
「んで、そんな事件起こしたら終身刑か追放だよな? トリーシャ、どっちの可能性が高いと思う?」
「え? 死刑は免れて多分追放――って、え!?」

 トリーシャを含む全員がそれに気付いた。

「まさか千里さんが!?」
「可能性としては、考えられなくもないな」

 エルはいまいち納得していないようだ。

「アレフクン、私は違うと思うわ」

 アリサもそうだった。
 前に、アリサは夜千里と話をしたことがあった。
 他愛もない話。
 亮の話。
 特に亮の事を話す千里はとても温かかった。

「あんな温かく亮クンのことを話していた彼が、亮クンに迷惑かかるようなことするとは思えないの」
「そうっス! あの時の千里さんはとても温かかったっス!」

 言われてアレフは恥ずかしくなってしまった。
 千里は亮を守る側だ。
 亮に迷惑を香稀有様なことをするとは思えない。

「悪くはない推理だったんだがな」

 トーヤも冷ややかにアレフを見ていた。





END


亮祐:管理人です。今回は見事にアレフの迷推理大展開です。名が迷ってトコがキモだよ。
翔:カッコ悪いな!!
亮祐:アレフは真相に気付けるのでしょうか?では次に続きます。

BGM:命の儚さ/「煉獄庭園」

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