EMPTY A CONCEPTION

リトル  1

モドル | トジル | ススム

 エンフィールドで三人の声が響いた。

「まちやがれーーーっ!!!」
「「うっわーーーっっ!!!」」

 怒りの形相のアルベルトにアレフと亮が追いかけられている。

 アレフがガイと名乗る旅のナンパ師とアリサをターゲットにナンパ勝負をすることになったのは先ほどのこと。
 亮も本気でアリサさんを口説いてみたらどうだ?と提案したのでそうなったのだが、それをアリサさんに惚れているアルベルトに知られて逃げる羽目になった。
 ちなみにガイは既に捕まり、ボッコボコにされてゴミ箱に放り込まれていた。

 二人は必死で逃げていた。
 ガイの二の舞になるのは御免だった。
 けれどこのままでは埒があかない。
 その時、亮が足をもつらせ転んだ。
 それに気付いたアレフも足を止めたが、迫るアルベルト気迫に硬直してしまった。
 追いついたアルベルトの槍が亮に振り下ろされた。
 絶体絶命だと思った。

 バキィ、と鈍い音が響いた。
 槍で殴られた音ではなかった。
 亮の足がアルベルトの脛を蹴り上げていた。

「グッ…!!」

 骨の真上を蹴られたアルベルトはその場で座り込み、足を押さえた。
 声でアレフは我に返った。

「大丈夫かっ!?」

 亮を見ると、呆けていた。
 アルベルトを見たまま、微動もしない。

「亮?」

 呼びかけに気付いた亮がやっとこちらへ振り向いてくれた。
 けれどそれは亮ではなかった。

「おにいちゃん、だーれ?」

 幼い子供のような喋りと声のトーン。

 ―――別人格だ

 急な自体にアレフは思わず固まった。

「アレフさんっ!」
「アレフくんっ!」

 向こうからトリーシャとシーラがやって来た。

「アルベルトさんと騒ぎになってるってきいてきたんだけど……」
「悶絶しちゃってるね、アルベルトさん……」
「助かった2人ともっ!」

 まさしく“天の助け”だ。
 思わず二人に抱きついた。
 アレフの行動に二人は慌てた。

「ア、アレフくん!?」
「どうしたのアレフさん!?」
「実は……」
「あ!このまえのおねえちゃん!」

 声を上げて亮がトリーシャを指差した。

「ダンディライオン、返しちゃったけど嫌いだった?」
「えっ? そ、そんなことないよっ」

 戸惑いながらもトリーシャが返事した。
 どうやらローズレイクでトリーシャと話した人格らしい。

 ―――確かドクターがいってた名前は……

 思い出してその名を言った。

「リトル?」
「うん。でもどおしておにいちゃんがしってるの?」
「ドクターが教えてくれたんだ」
「トーヤおにいちゃんが?」

 いい感じだ。
 トリーシャ達が来てくれて助かった。

「アレフくん、そろそろアルベルトさんが動きそうなんだけど……」
「あ」

 シーラが言ってくれるまですっかり忘れていた。
 何の騒ぎだと野次馬も集まってきていた。
 とにかく、今の亮のことを知られる訳にはいかない。
 ここからならシーラの家が近かかった。

「シーラ、君の家はすぐそこだったよね?」
「そうね。私の家へ行きましょう」

 話しが分かってくれて良かった。
 とにかく、四人は慌ててその場を後にし、シーラの家へと向かった。





 


亮祐:管理人です。今回はアレフのテーマ別イベント『ナンパ・ウォーズ』その後です。この時点でアレフ、亮とはED迎えられないことが確定ですな。別人格の一人リトルの登場。リトルはトリーシャと話したことがあるのでトリーシャには懐いてる様子。とはいっても他の二人にも平気で話してくれるような……。まあ、この辺は次回で。次回はシーラの家で愛藍のことを訊く事になります。ではこの辺で。


BGM:命の儚さ/「煉獄庭園」

モドル | トジル | ススム

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