EMPTY A CONCEPTION

美術館盗難事件  1

モドル | トジル | ススム

「どういうことだよっ!」

 いてもたってもいられず、アレフが机を叩いた。
 ローレライの前にいたアレフの元にアリサとテディが尋常ではない様子で来たのは先程の事だ。

 亮が自警団に捕まった

 一緒にいたクリスと別れ、自警団事務所に乗り込んだ。
 そして亮は今、容疑者として自警団の牢獄に拘束されている。
 アレフはそんなことするワケないと亮を捕らえたアルベルトとリカルドにたてついていた。

「亮クンがそんなことするとは思えません。何かの手違いじゃあ…?」
「そうっスよっ!」
「残念ですがアリサさん、彼の部屋から美術館から盗まれた品が見つかってるんです」
「それに今日の午前12:30〜1:30までの間、奴にアリバイはないし、あいつも“その時間帯の記憶はない”ってぬかしてやがる。こりゃ完璧クロだな」
「あるワケねーだろっ! んな真夜中にっ!」

 アルベルトの襟に掴みかかった。
 そんなこと亮がする訳がない。
 記憶喪失で右も左も解らない亮がそんなこと出来る筈がない。

 ―――だって亮は、あまりにも似ているから。

 そこへシーラ、トリーシャ、エル、トーヤの四人が駆け込んで来た。

「今すぐ亮くんを解放してくださいっ!」
「そうだよ、お父さんっ! 亮さんがそんなことするワケないじゃないかっ!」
「アルベルトっ、あんたの目は節穴かっ!?」
「だからっ、奴には犯行時にアリバイがないしっ、「覚えてない」ってトンチンカンな事ぬかしてやがるし、部屋から盗品だって見つかってるんだっ!! それに、警備員が証言してる。奴の似顔絵を見せたとたん『コイツが犯人だ』ってな。それに、たった数日の付き合いでそいつの人間性がわかるのか?」

 こう言われては返す言葉もない。
 こんなことになるなら昨日ちゃんと亮から話を聞くべきだった。
 どうしてあのまま気にもせず帰ってしまったんだろう。
 シーラとトリーシャは負けずにたてついた。

「た、確かに付き合いは短いよ。でも亮さんはそんなことできるような人じゃないよっ!」
「そうよっ」

「あんな子供っぽい人がっ! ………え?」
「あんな 紳士的 な人がっ! ………え?」

 己らの言い分に双方とも顔を見合わせた。

「何いってるの、シーラ。亮さんは子供っぽい人だよ」
「違うわ。亮くんは紳士的な人よ」
「違うってっ! だって一昨日タンポポでかんむり作ってたんだよっ!? そんな人が紳士的な人なワケないじゃないかっ!」
「私の時は手の甲にキスしてきたのよ? 子供っぽい人なワケないじゃない!」
「どういうことだ……?」
「トリーシャ……」

 事の展開にアルベルト、そして流石のリカルドも放心状態だ。

「何ともいえんな。亮はその両方、そして凶暴さももっている。もしかしたら他にもあるかもしれないが…」
「どういうことだよ? ドクター」
「……トリーシャ、多分、おまえが帰ったあとだと思うが俺はローズレイクにいた亮と会った」
「本当?」
「そのとき亮は、自分の名を「リトルだ」と主張していた」
「え?どういう…」
「それだけではない。俺は夜12:00、亮に医院へ来てもらったんだ」
「「「「「「「「ええっ!?」」」」」」」」

 そこに居る、トーヤ以外の全ての者が驚いていた。
 だとすれば、亮にアリバイがあるではないか。

「だったらもっと早くいえよ、ドクターッ! そうすればっ…」
「いや、アリバイにはならない。亮を帰したのは12:30だった」

 確かに、これではアリバイにはならない。
 医院からの距離ではドクターと別れた後、その足で美術館へ忍び込むことは充分可能だ。

「俺は最初、記憶障害だと思ってカウンセリングをしようと一昨日のことで覚えてることはないかきいてみた。だが……」

 その時だった。

「「「ギャア゛ア゛あ゛ああぁぁァッッ!!!」」」

 恐ろしい悲鳴が聞こえてきた。

「な、なに? 今の……」
「お父さん!」
「ご主人様ぁっ!」

 シーラやトリーシャ、テディは聞こえた悲鳴に怯え、しがみ付いた。

「今のは、牢からの声じゃ……」
「行くぞっ! アルッ!」
「俺もっ!」
「あたしもだっ!」
「亮っ……」

 アルベルト、リカルド、アレフ、エル、トーヤの五人は恐怖も顧みず、悲鳴がした牢へ向かっていった。





 


亮祐:管理人です。やっと事件が起きた月に入りました。長かった、長かった。
翔:長すぎだよ!!
亮祐:約一名、言い争うような性格じゃないのに言い争ってしまっている事をお許しください・・・。m(_ _)m次回、アレフ達は亮が拘束されている牢でとんでもないものを見ることになります。グロ系です。では 続きます。


BGM:命の儚さ/「煉獄庭園」

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