EMPTY A CONCEPTION

亮  5

モドル | トジル | ススム

 陽光が広場を、白い洋館を照らしている。
 その前では五人と一匹が洋館を見上げていた。

「これが亮の家か……」
「うひゃ〜っス……」
「大きい……」

 その大きさにアレフとテディと亮が圧倒されている。
 遠目から見ても大きいとは思っていたがそれ以上に大きな洋館だった。
 シーラの家と同じ、ヘタすればそれ以上かもしれない。

「まさか、誕生の森の中にこんな所があるなんてね」

 エルは今まで薬草取りで幾度もこの森の中に入っていて、そこら辺の猟師よりもここを熟知していると思っていたが、このような場所があるのは知らなかった。

「生活観はまったく感じられないな」

 トーヤが壁にからみついた蔦の一部を引き千切った。
 蔦は洋館全体を覆うように伸びている。
 誰も住んでいないのは明らかだ。

「とにかく、入ればわかることだろう」

 エルが玄関の扉に手をかける。
 錆付いた音を立てながら扉は開かれた。
 中は外装が蔦だらけのわりに綺麗で、一本の通路の奥に一つの扉がある。

「中は綺麗だね」
「やっぱ広いな……」
「当たり前だ」
「すいませーんっ!誰かいませんかー――っ!?」

 エルに続いてトーヤ、アレフ、アルベルトの三人が中へ行く。
 けれど亮は一歩も動かず、三人の後ろを見ていた。
 ゆっくり眼を閉じて、再び開いたその時、表情が幼かった。

「ひゃあ!」
「ただいまぁっ!」

 抱えていたテディを放し、三人を押しのけてさっさと奥の扉へ入って行っていく。

「亮、待てってっ!」

 慌てて追いかけたが奥の扉を開けて足を止めた。
 その先はかなり広い居間らしき部屋に繋がっていたが、そこに亮の姿はなかった。
 両脇には五つの扉。
 見失ってしまった。

「別の部屋に入ったみたいだな」
「亮さん……」
「とにかく、分かれて亮を探そう。その方が効率がいい」
「まったく、余計なことしやがって」

 アルベルトが面倒臭そうに溜息を吐いた。










「どうだった? アルベルト」
「いや」

 20分後、一階の探索を終えたエルとアルベルトの二人が顔を合わせていた。

「亮だけじゃない。人っ子一人もいなかった」
「あたしもそうだ」

 残りは二階だ。
 二人はアレフとトーヤがいる二階へ続く階段を上り始めた。

 その頃、トーヤは二階の部屋の本棚を調べていた。
 ベッドの大きさからいって子供部屋らしいが必要最低限の家具しかなく、なんとも淋しい。
 部屋の中も寒色系で統一されている。

「ないな。何か手がかりはないかと思ったんだが……」

 あの時、亮は「ただいま」と言って家の中へ消えて行った。
 何かを思い出したのだろう。
 だからここが亮の家だと証明するも物が一つくらいないかと思った。
 けれどこの部屋にあるのは辞書や詩集といった物ばかりだ。
 写真の一つもない。

 根気よく本棚を調べていたその時、後ろの扉が開いた。

「ドクター、いるかい?」

 振り向くとエルがいた。

「一階は探し終わったのか?」
「ああ。亮どころか人っ子一人いなかった。アルベルトは他の部屋を見てるよ」
「そうか」

 それだけ聞くとトーヤは再び本棚へ目を向ける。

「ん?」

 本棚の脇から本のような物がちらっと見えた。
 手を伸ばして取り出してみる。
 出てきたのは分厚い黒い本だった。
 鍵付だったので鍵がかかっていると思いきや、本は簡単に開いた。
 白い中表紙。
 それを見たエルが怪訝そうににトーヤを見る。

「ドクター……」
「……手がかりのためだ」

 トーヤも一瞬迷ったが先を読むため、中表紙を開こうとする。
 ふいに、後ろから気配を感じた。

「―――っ!!」

 振り向いた二人の眼に、振り下ろされた太刀が写った。





 


亮祐:管理人です。今回は殆ど変わってないです。サスペンスチックにしたかったのですがなっているんだろうか…。
翔:書いたおまえがそんなんでどうする。
亮祐:では続きます!


BGM:命の儚さ/「煉獄庭園」

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