「「「アリサさんっっっ!!!」」」
悲鳴がした脱衣所の扉を勢いよく開く。
そこはとんでもないことになっていた。
青色のズボンだけ履いた彼の右手から真っ赤な滴がたれている。
その足元が赤く染まっていた。
大量の髪の毛が床に散乱している。
彼の長く綺麗な漆黒の髪は無残にもメチャクチャに斬られていた。
部屋の隅でアリサとテディが青い顔で立ち尽くしていた。
「アリサさん!」
「アルベルトさん……」
「何があったんですか!?」
「それが……」
青くなりながらもアリサは話をしてくれた。
シャワーを浴び終えた彼に服を渡したアリサは一度脱衣所から出た。
服のサイズは合っているか訊こうと頃合を見計らって声をかけてみたが何の返事も無かった。
気になって扉を開けてアリサは悲鳴をあげたのだ。
服を着た彼の両手から真っ赤な滴がたれていたから。
アレフがその話を聞きながら彼の腕を見つめていた。
それは彼が自分でやったということか。
―――早く手当てしねぇと……
今は傷の手当てが先決だ。
アレフは彼の元に寄り、腕を手に取った。
「大丈夫か!?」
「たいしたことない」
けれど彼はアレフの手を払いのけた。
先程までとは打って変わって冷たい印象を感じる。
「血の量は多いけど傷自体は浅いからすぐ治る。髪だって放っておけばまたのびる」
「だからって“ハイ、そーですか”なんていえるかよっ!とにかく見せっ…―――っ!?」
掴んだ彼の腕を見て、アレフはその先の言葉を失った。
その腕に、酷く痛々しい傷跡が幾つもあったから。
細く、白い線となって残ったもの。
傷跡の周りに縫い跡が付いてるもの。
傷跡の大半が赤黒く、ぶよぶよと膨れ上がっていた。
―――ろくに治療してなかったのか?
しばらくその腕を凝視していた。
「とにかく、傷が浅いからといって放っておくワケにはいかない」
芯の通ったリカルドの声でアレフは我に返った。
「私はドクターを呼んで来る。アル、おまえはここにいるんだ」
「隊長自らですか? それなら俺が……」
「いや、他にも、用があってな……」
アルベルトにその場を託してリカルドはジョートショップを後にした。
どうしても調べておきたいことがあったから。
―――願わくば、そうでないことを……
切から思ってリカルドはクラウド医院へ駆けていた。
亮祐:管理人です。リカルドさんにおける伏線を色濃くしました。でないと実際伏線が出たとき忘れ去られてそうな気がしたので……。前回の修正でも書きましたが髪を切る行為は当初の予定では中盤〜終盤辺りでするつもりでした。ネタバレになるんであまり多く語りませんが悠久時に起こったあることで強くなろうと決めた亮がアレフに頼んで髪を切ってもらうというものにする筈が改めたブロットを見てみたら12月以降になることが判明し「そんな終盤になってから1主の髪変えても意味ねぇーっ!こうなったら最初のうちに変えてやらあっ!!」ということになったと。では続きます。
BGM:命の儚さ/「煉獄庭園」