ジョートショップはエンフィールドの丁度中心にある何でも屋だ。
昔は夫婦二人で経営していた店だが旦那の方が亡くなって今は妻アリサと目となっている魔法生物テディが経営している。
経営と言っても目の不自由な女と小さな魔法生物に何でも屋が出来る訳もなく、現在は休業状態といった方が正しかった。
今、ジョートショップにはアリサ・アスティアとその肩にテディ。
自警団のリカルド・フォスターとアルベルト・コーレイン。
そしてアレフ=コールソンと彼が居る。
彼の自己紹介、5日前のこと、彼のこと、そして先程の騒ぎの事情を自警団に説明した。
「本当に何も覚えてないのかい?」
リカルドの質問に彼が無言で頷く。
「そういえば……その服、少し汚れてるみたいね」
アリサの言葉通り彼の服は少し汚れていた。
よく考えてみれば発見してから五日間同じ服のままだったし、体もタオルで拭いていただけだった。
「お風呂に入ったほうがいいわ。新しい服は私が準備しておくから」
「はい」
二人は立ち上がり、部屋を出て行った。
残されたのはアレフ、アルベルト、リカルドの三人。
アレフはどうすればいいか戸惑っていたが彼の歌を話題に沈黙を破ることにした。
「そういやあの歌声すごかったよな。なんかこう、一度聴いたら忘れられなくて、もう一度聴きたいみたいな…」
「確かにな。俺も聴いたが、ありゃ一度聴いたら忘れられねぇ」
「……まるで、人魚のようだね」
呟いたのはリカルドだった。
「人魚の歌は漁に出た男を惑わすというからね」
人魚の歌声は人間を惑わせる。
その美しい歌声で船乗りを引き寄せ命を奪う。
「そういや現に、すごい迫力だったな……」
アルベルトの脳裏に先程の住民達の様子が思い出される。
『さっきの歌もっとうたえよーーーっ!』
『途中でやめんなよーーーーっ!』
あの住民達の迫力。
アルベルトもリカルドも一目で尋常ではないことが解った。
彼の歌を聴いて住民達がこうなるのも無理はないとも思った。
彼の歌に、二人も魅入られたから。
「いったい何なんだよ、あいつ……」
「さあな。記憶喪失じゃ、わかるワケねーだろ」
「そのことについてだが……」
その呟きで二人は再びリカルドへ視線を戻す。
意を決してリカルドが自分が良く知る少女の話をしようとした。
「キャアアァァァッッ!!!」
風呂場から聞こえた女性の悲鳴。
彼と風呂場へ行ったアリサのものだった。
亮祐:管理人です。色々と削ってみました。この世界観に麻薬は合いませんでしたな。ちなみに前の「美しい唄」も「亮」の中に入っていたものでした。
だからファイル名区切ってないんです。
翔:ちゃんと分けろって。
亮祐:では続きます!
BGM:命の儚さ/「煉獄庭園」