思いもしなかった。
「正直マリアがうらやましいわー。だって―――」
帰ってきてからも、君は明るく笑っていたから。
昼食の時間帯だけあってさくら亭には大勢の客食事している。
アレフ達もその客だった。
「それでね、ほんのちょっと帰るのが遅くなっただけなのにパパったら……――って、きいてるのっ!?」
「あーはいはい。ちゃんときいてますよ」
その筈なのに、何故マリアの愚痴を聞きながらなのだろう。
これではせっかくの美味い昼食が不味くなってしまう。
「本当にほんのちょっとだけなんだよっ!?それなのにパパったらマリアが誘拐されたんじゃないかって大騒ぎしちゃって」
「いい加減にしなよマリア。せっかくの食事がまずくなっちまうよ」
「でも自警団にまで通報したんだよおっ!?」
リサが言うことも通用しない。
それにしても急にどうしたというのだろう。
いままでこんなことはいくらでもあった。
なのに今日に限って怒り出すなんて。
「今までそんなこといくらでもあっただろ」
「そうだけどマリアもう17なんだよっ!?それなのにパパったら今でも子ども扱いなんだもんっ!!」
「親から見れば子供はいくつになっても子供だからねぇ。しょうがないんじゃないのかい?」
「リサまで〜〜ぇっ!!」
マリアが悔しそうに声を荒げた。
―――ああ、そういうことか
ようするにもう子ども扱いされたくないということか。
そうは言ってもマリアはまだまだ子供だ。
当分無理だろう。
今まで黙って見ていた葉月が口を出した。
「でもそれだけマリアを愛してるってことよー」
「それはそうだけど……」
「正直マリアがうらやましいわー。だって―――」
「私には親がいないものー」
三人の動きがぴたりと止まった。
アレフの手からスプーンが落ち、金属音が静まり返ったさくら亭に響いた。
「物心ついた時にはもう孤児院にいたから親の顔も知らないし、親がどんなものかもわからないのよー」
いつもと変わらぬ笑顔。
それなのに語られる内容は酷く悲しい。
「だから、みんながちょっとうらやましいわー」
いつもと変わらぬ笑顔。
けれど、何処か悲しく見えたような気がした。
END
亮祐:管理人です。久しぶりの葉月新作です。
翔:間あけすぎだよ!!
亮祐:これは葉月がエンフィールドに帰ってきてからシャドウとの関係が発覚するまでにあった話です。天使のような笑顔の彼女は実は孤児だったのですよ。しかも少々特殊な位置付けにあったので
色々とね。でも今はエンフィールドの皆やシャドウから愛されているので無問題vさて、次回は神無の話を書こうと思っております。だってまだ一本しか書いてない…。ではこの辺で
。
BGM:ブランコに揺れて/奥田美和子