リボーン

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  彼岸花  

夕飯までの時間潰しに、ぷらぷらと目的もなく土手を歩いていたは、ふと群生する赤い花を見つけ、とてとてと近付いた。
葉のない一本の茎から多数の花が開き、その花弁一枚一枚が外側に反っている。
にょっきり生えている、という表現が似合うその花は、よくよく見ればそこかしこに咲いている。
日本の花など桜しか知らないは、「んー?」と首を傾げつつその赤い花を見つめた。
「彼岸花がそんなに珍しいの?」
「んんー?」
声につられて顔を上げると、バイクに跨がった雲雀が土手の上からを見下ろしていた。市内巡回の帰りなのだろう、風に乗って微かに血の臭いがする。
「この花、彼岸花って言うのかー?」
「そう、曼珠沙華とも言うね。墓地によく咲いて毒があるから、嫌ってる人も多いよ」
「へー、こんなにきれいなのにー?」
一本の彼岸花をぶつりと手折り、はくるくると花を弄ぶ。
「日本人の感性っておかしいよなー。桜の根元には死体が埋まってるなんて伝説があるのに、その桜を愛でる習慣があったりさー」
「それ、本当は昔の作家の創作らしいよ。桜がこんなに美しいのは何故だろう、きっと死体が埋められてるからに違いない、ってね」
「物騒な発想するヤツもいたもんだなー」
ケラケラ笑いながら、はなおも花を弄ぶ。
「それで元から毒がある彼岸花は嫌われ者ー? 花だって好きで毒入りになったわけじゃないだろうにー。まるで―――」



―――六道骸みたいだな。



ピクリ、と雲雀の秀麗な眉が動く。
それを見ては三日月のような笑みを浮かべた。
「うん、そう考えたらますますアイツに似てきたなー。せっかくだから獄中見舞いに送ってやろー」
「六道がどこにいるか知ってるの?」
「一応ねー。でも教えない。教えたとしても、今のお前には手が出せない場所にいるしねー」
 雲雀の眉がさらに寄る。
「それは――」
「試してみなくても判るってー。粋がるなよ委員長? お前はまだ、俺にすら達してないんだから」
殺し屋、というよりも殺人鬼じみた殺気を発するを前にしても、雲雀は一歩足りとも引かない。
「他人が設置した罠に守られてる人間に言われたくないね」
「あは、バレたー?」
ころりと殺気を納め、はハァ〜と重いため息を吐いた。
「純粋な戦闘力だけだったら俺と同レベルなんだから、お前ってホントに非常識な存在だよなー。罠のアドバンテージも日々刻々と段々と減ってるしー」
「当然でしょ? 人の学校に変な物仕掛けないで欲しいね」
「姉やんの罠、そう簡単に解除出来ない代物ばっかなんだけどなー。まあいっか、それぐらいじゃないと雲の守護者に相応しくないしなー」
「そんな物になった覚えはないけど?」
「ならないと六道に会えないって知ってもー?」
「………」
「まあ時間はたっぷりあるし、ゆっくり悩め委員長。選択肢は限りなくゼロに近いけどな」
逡巡する雲雀を尻目に、はぶつりぶつりと手折った花を束にする。
「じゃあなヒバリ、また明日学校で」
赤い彼岸花を両手に抱え、はその場を後にする。
雲雀はしばしその背を見送り、赤い夕陽を浴びながらバイクに跨がり直す。
後に残されたのは、花を失った土手だけだった。





END.


個人的に彼岸花は好きな花です。たとえ毒があったとしても、それもまた魅力でしょう。
近所に咲いてる彼岸花が枯れちゃって寂しいな〜、と思っていたら出来た話です。彼岸花って一部地域では死人花とも言うらしくて、骸にぴったりだなぁとも思ったのです。
というか、男として花が似合うってどうだろう?
作中の雲雀さんの役はリボーンにしようかとも思いましたが、に姉やんの話をさせたかったので雲雀さん。
 の姉やんは超一流の建築家で、建て物に罠を仕掛けて嵌める、という手法で暗殺を行う殺し屋でもあります。
並中にも罠を仕掛けてて、雲雀さんにとってはかなり目障りな存在なのです。

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