「さあ、バスに乗れ。出発するぞーっ!!」
鬼ヒゲの言葉で一号生達はバスに乗り込んでいく。
勿論、桃もその一人だ。
「・・・・・・」
順番を待ちながら桃はこれから立ち向かう『驚邏大四凶殺』の事を考えていた。
赤石先輩から聞いた話によると、過去三百年の歴史の中 生存者は唯一人。それを聞いて桃が一番に感じた事は恐怖だった。死ぬ事に対する恐怖とは少し違うような感じだったがとにかく恐怖を感じた。
あの時は赤石先輩の手前、平気な素振りを見せたがやはり恐いものは恐い・・・。
「どうした?桃。元気がないぞ」
「腹でもへったんか?」
「・・・恐いのか?」
「いや・・・」
皆にも分かるほど考えていたのかと思うと、少し情けなかった。
その時
「おーい、桃ーーっ!」
突然聞こえて来た大声に思わず振り向いてみると、ニ号生教室の窓から教官が話し掛けていた。
赤石先輩も一緒だ。
「無事戻ってこいよーーっ!でねぇと、赤石の見られちゃ困る恥ずかしい写を塾中にばら撒くからなーーーっ!!」
「「「「えっ!?」」」」
「―――――――っ!?!?!?」
が言い出したことに桃達は驚いてしまった。一番驚いたのは勿論赤石なのだが。
「ちなみにその写は大木の下で寝てる・・・」
「やめんかーーーーーーっっっ!!!」
赤石は慌てての口を塞いでいる。
そんなに、見られては困る恥ずかしい写なんだろうか・・・。
「なんだあ?いったい」
「よほど見られたくねぇんじゃな」
「いったい、どんな写なんだ?」
「・・・・・・」
三人の言葉は、桃の耳には入ってこなかった。
たった今、気付いたのだ。あの時感じた恐怖の正体に。
死ぬ事に対する恐怖もあったが、それ以上に赤石会えなくなる事に恐怖したのだ。
「赤石先輩ーーーっ!」
桃は手を振って赤石の名を呼ぶ。
「俺たちはちゃんと帰ってきますっ!だから安心してくださいっ!!」
そう言ってバスの中へ乗り込んでいった。
正直言うとまだ恐いが、自分には生きて戻らねばならない理由が出来た。その為には恐がる訳にはいかないのだ。
桃はこういっては赤石先輩に悪いような気はするが、に感謝した。
END
亮祐:桃サイド。会えなくなるのが恐いっていってる割には桃はまだ赤石先輩の思いに気付いてない罪な桃。
翔:というよりただの鈍感じゃあ・・・。