「さあ、バスに乗れ。出発するぞーっ!!」
鬼ヒゲの言葉で一号生達はバスに乗り込んでいく。
その中の一人、桃の後ろ姿を遠くから見つめる者が居た。
「・・・・・・」
それはニ号生教室で授業を受けている赤石だった。赤石の席は窓際だったので外の、桃の様子がよく見える。
「驚邏大四凶殺、か・・・」
赤石は午前中に驚邏大四凶殺供養塔を見せ、その恐ろしさを桃に伝えた。
赤石自身、桃には死んでもらいたくなかった。
過去三百年、生存者が一人もいない事は赤石も知っている。
きっと、桃は帰ってこないだろう。
だが、あの男ならという考えが頭から消えてくれないのだ。
「俺らしくもねぇ・・・」
己の不甲斐無さを恥じながら赤石は黒板へと目を向けた。
だが
「教えてやろうか?」
「―――――っ!?!?」
―――ガタッ!
すぐ目の前ののドアップに驚き、椅子から落ちそうになってしまった。
「ま、教官っ!?」
「なんでここに・・・!」
「・・・」
突然のの出現により、ニ号生教室は騒ぎとなった。
黒板の前で教えていたもの元へ近付く。
「保健室の方は・・・」
「どーせ誰も来やしねぇよ。それより、桃が生きて男塾に戻れるようにしてやろうじゃねぇか」
そう言うとは窓に近付き、大きく息を吸い込む。
そして
「おーい、桃ーーっ!」
今、まさにバスへ乗り込もうとした桃に向かって大声で喋り出したのだ。
声に驚いた桃達一号生全員がこちらへ振り向いた。
「無事戻ってこいよーーっ!でねぇと、赤石の見られちゃ困る恥ずかしい写を塾中にばら撒くからなーーーっ!!」
「「「「えっ!?」」」」
「―――――――っ!?!?!?」
が言い出したことに一番驚いたのは勿論赤石だ。
「なんだぁ?いったい・・・」
「さあ・・・」
「???」
ニ号生達も訳が分からず頭上に?マークを浮かべている。
「ちなみにその写は大木の下で寝てる・・・」
「やめんかーーーーーーっっっ!!!」
赤石は慌てての口を塞ぐ。“大木の下で寝てる”の後に続くような言葉は一つしか思いつかない。だとすれば教官が言う見られちゃ困る恥ずかしい写もあれだ。
寝てる桃に口付けた、あの時だ。
偶然、はあれをみてシャッターにおさめたのだろう。
「まったく・・・」
「赤石先輩ーーっ!」
が呆れている中、外から桃の声が聞こえてくる。
「俺たちはちゃんと帰ってきますっ!だから安心してくださいっ!!」
そう言うと桃はバスに乗り込んでいった。
「桃の奴・・・」
たったそれだけの事なのに、赤石はどうしようもなく嬉しかった。
これでは、戻ってくると信じてしまうではないか・・・。
「じゃ、俺はこれで・・・」
「まて・・・」
帰ろうとしたに声をかけたのは赤石だ。
しかもドスが掛かった声で・・・。
「写とネガをよこせ・・・」
「桃が帰ってきたらな」
「おい、・・・」
二人の様子にやニ号生達はそそくさと逃げる準備をしてしまう。
そして
「あ、帰ってこなかったら容赦なくばら撒くからな。泣きっ面に蜂ってワケだ」
「・・・けやあーーーっっ!!!」
の言葉にキレた赤石のとばっちりから逃げる為に四方八方へ逃げ出したのであった・・・。
END
亮祐:いや、赤石先輩嫌ってるわけじゃありませんよ?ただ弄りたいだけなんです。
翔:その時点でダメなんだよ