ボンバーマンジェッターズ

死に逝く貴方に

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「はっ!はあっ!はっ……」

 ヒゲヒゲ団の基地に爆弾を仕掛け、後は脱出するだけであったが体はもう動かなかった。
 やはり、この前のボンバー星で受けた傷が思ったより深かった所為だろう。

「ここまで、か……」

 マイティは壁にもたれて座り込んだ。
 周りは緊急のサイレンが鳴り響き、赤ランプが点滅している。
 通信機も落としてしまった。
 もう、助かる術は残されていない。
 死ぬことは怖くなかった。
 むしろ自分の命一つで奴らの基地を破壊させられるのなら本望だ。

「シロボン……」

 ただ弟の、シロボンの事だけが気がかりだった。
 自分が死んだと知ったらシロボンはどうなるだろうか。
 やはり泣くのだろうか。
 “何で死んだんだよ”と泣いて、泣いて、泣いて
 泣き叫ぶのだろうか。
 シロボンには泣いてほしくなかった。
 あの子に泣き顔は似合わないから。
 いつまでも、あの太陽のように無邪気な笑顔を浮かべててもらいたいから。

「こんなことなら、僕の気持ちを伝えて、嫌われてから来るべきだったな……」

 ―――もう、そんな事も無理なんだろうけど……

 目を閉じて、真っ暗闇の中にシロボンのあの笑顔を思い浮かべる。
 想像の中のシロボンは、やはりあの太陽のように無邪気な笑顔を浮かべていた。
 ほんの少し勇気を出せば伝えられた事も、今ではもう会うことも出来ない。
 ただそれだけが心残りだった。





「兄ちゃん」



 幻聴だろうか、シロボンの声がした。
 目を開けると、そこには幻覚なんかではない、本物のシロボンが目の前に居た。

「シロボン、どうして……」
「ぼく、兄ちゃんのこと一番好きだよ。世界中で一番大好きっ!」
「……僕も、僕もシロボンのこと好きだよ。でも僕の好きはシロボンの好きとは違」
「うん、知ってる」
「え…?」
「特別に好きってことでしょ? ぼくも兄ちゃんのこと特別に好きだよっ!」
「シロボン…」
「さ、早くここから出よっ!」
「うん、そうだね」

 差し出された手を取って、立ち上がる。
 不思議なことに動かなかった体は軽くなっていた。
 鳴り響いていたサイレンも、ぴたりと止んでいた。
 ヒゲヒゲ団に会う事もなく宇宙船の中へ戻る事も出来た。

「兄ちゃん」
「ん?」
「これからどうするの?」
「そうだなぁ……ドコか遠くの星へ行って、そこで2人で暮らそう?」
「2人、かぁ……」
「やっぱり、ボンばあさんや友達と分かれるのは嫌……」
「うん、行こうっ! 兄ちゃんといられるならドコだっていいっ!」
「……うん、分かった」

 後ろから抱きしめてくれたシロボンに答えるようにマイティは宇宙船を出発させ、基地から脱出した。
 安全な所まではなれた途端、基地が爆発した。

「基地、爆発しちゃったね」
「うん」
「……兄ちゃん?」
「ん?」



「大好きっ!」

 シロボンの笑顔は、やはり太陽のように無邪気だった。
 マイティもそんなシロボンに笑顔を――――





 緊急時のサイレンが鳴り響く中、それを知らせるランプが点滅しており、壁にもビシビシと無数の亀裂が走っている。
 そんな中、壁にもたれたままのマイティは良い夢でも見ているのか、満足そうな寝顔を浮かべていた。





 死に逝く貴方に
 目覚めることのない優しい夢を……―――





END


亮祐:「マイティの一番長い一日」を見た直後に浮かんだ二つのネタの片方。実は前回の「願い事」の方が後に出来たけどあえてそっちを先にアップ。暗い、 というより死にネタ。問題はマイティが本当に死んだかどうかって事ですが。
翔:せめて次の「シャウトの涙」見てから書くべきだったんじゃあ……?
亮祐:余談ですがシロボンとのやり取りはもちろん夢。滅んでいく基地の中で死に逝くマイティが見た最後の夢。マイティにとってはこれが現実だから痛みを感じることもなく死んでもその夢の中で生き続けると思う。もちろんシロボンと一緒に。―――って、ことは初はその遠くの星で犯るのか……。
翔:気分台無しな発言だな……。


BGM『“Knockout drops”』/森川智之・石川英郎

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