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● 白と黒と灰色 --- 第一回 ●

 世の中を、色で分けたらどうなるんだろう?

 

 

 きっとみんな、シロとクロになって、それだけしかないというと思うんだ。

 

 

 でもね、みなさま。

 ほんとうは違うのです。

 

 

 白と黒だけじゃあないのです。

 灰色グレー色だってあるのです。

 

 

 これは、そんなぼくらグレーの物語。

 

 

   白と黒と灰色グレー色

 

 

「おーい」

 

 

「そろそろ起きなさい」
「ん〜……」

 

 

「起きなさいって、亜唯」

 

 

「時代劇の再放送はじまるから」

   ―――ガバッ!!(飛び起きる)

「起きたっ!」

 

 

   † † †

 

 

「――って、アレー……?まだ8時……」(目を擦る)
「はじまる前に朝ごはん」(亜唯の頭を撫でる)

 

 

「早いとこ食べないと、朝昼が一緒になるよ」

 緋代 咲夜。
 中等部からの数少ない友達の一人。

 

 

そして

「オッケイ」(服を脱ぐ)
「――って、今ここで脱ぐの?」

 

 

「? いけない?」(既に下着姿)
「……まあ、いいか。今更か

 一緒に二人で暮らしてます。

 

 

   † † †

 

 

「朝ごはん何するの? 手伝う?」(着替え終了)
「いや、いつも通りのきゅうりとレタスとトマトのサラダとトーストのベーコンエッグ乗せとデザートにヨーグルトだから大丈夫」

 

 

「できたら呼ぶから、顔でも洗っておきなさい」
「はーい」

 

 

   ―――バタン(咲夜、部屋から出て行く)

「………」

 

 

「じゃあ、顔洗おっと」(ベッドから降りる)

 

 

   † † †

 

 

   ―――ジャバジャバジャバジャバ(水道から水が流れる)

 

 

『コレ、あんたのだよね? 翡翠枇 亜唯クン』

 咲ちゃんはボクを愛してる人だ。

 

 

 深く 深く。

『色がね、とても綺麗に見えてたのに、今はもう、モノクロでしか見えないんだ』

 

 

 とても深く。

『―――を、奪えばいいと思った』

 

 

 狂おしい、ほどに。

『ねぇ、亜唯。俺は、どうすればイイ?』

 

 

「郁保も、こんな気持ちだったのかな……」

 

 

『好きだなんだよっ! おまえが…』///

 何故かボクに惚れた人。

 

 

『ごめんっ!! 本当にごめんっ!!』

 どうしても、ボクに惚れた、人。

 

 

「(ボクにはよくわからないけど)」

   ―――キュッ(蛇口を閉めた)

 そんな感情、ボクは知らない。

 

 

 好きは知ってるけど、愛は知らない。

 たぶん、これはずっと変わらない。

 

 

『恵は愛したことある?』

『―――一度だけあった』

『ソーシソーアイ?』

『いや』

 

 

『絶対に届かない愛だ。今も、この先も』

 恵は誰を愛したんだろう。

 

 

「恵に会ったのは中等部のときだっけ」

 ずっと一人だった中一の頃。

 それが何だか退屈で、ふと行ってみた夜の街。

 

 

 昼と違い、暗闇を照らす光だらけの街は何もかも新鮮で

 

 

 すごく、キレイで

 

 

『こんな若い子イジめて、はずかしくないワケ?』

そんな時に出会った人。

 

 

『いらっしゃい』

大人の女の人。

 

 

『あたしも、君に、いってないことがあって……』

本当は、同い年の男の子。

 

 

「…………」

 ふと、思う。

 

 

 郁保と出会って。

 

 

 恵と美麗と出会って。

 

 

 そして咲ちゃんと出会って。

 

 

   ―――ピチョン

 

 

(じっと鏡に映る自分を見る)

 

 

 みんながいてくれたから
 ここまでこれたんだと思う。

 

「―――」

 

 こんなボクでも
 ここまでこれたんだと思う。

 

 

「うん」

 だから

 

 

「紅くない」

 

 

 これからも
 みんなと一緒に

 

BGM:「聖少女領域」/ALI PROJECT

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