キン肉マン原作&アニメ沿い連載夢小説「Amadeus」

criminal  3

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 ロビンマスク対カナディアンマン戦が終わった後楽園球場内の通路。
 二人の子供が歩いていた。

「すごかったな、ロビンマスク!」
「うん…」

 試合の興奮がまだ冷めてないに対し、はどこか暗かった。
 原因はわかっていた。

「そんなにキン肉マンの試合見たかったのか?」
「うん」

 が見たかったのはロビンマスクの試合ではない。
 後楽園ホールで行われるBブロック第一試合ブロッケンマン対ラーメンマン戦と第二試合キン肉マン対カレクック戦だ。
 はじめはもそちらを見るつもりだった。
 だがミートに敵情視察をして欲しいと頼まれ、後楽園ホールに来たのだ。

ちゃん、おじちゃんの試合もうはじまったかな?」
「んー、多分まだはじまったばっかぐらいじゃね?」

 Bブロックの試合は先にボクシングの試合が行われてからなのでこちらより行われる時間が遅い。
 おそらくの予想通りだろう。

 しばらく歩いていると前方に数人の大人が見えた。
 一箇所に固まってお互い顔を寄せ合っている。

「何してるのかな?」
「さあ?」
「行ってみよう!」

 気になったが一番に大人の元へ駆け寄った。

「何してるんですか?」

 下から見上げてくる視線に大人たちはちょっと驚いているようだった。

「おい、 どうする?」
「まあ、いいんじゃないか?」

 何かを決めて、大人達は二人に何か機械を見せた。

「これだよ」

 見てみると機械には画面があった。
 画面の映像は試合会場だった。
 ここ後楽園球場ではなく、後楽園ホールの。

「「あ!」」

 声を上げた二人だったが、慌てた大人達に口を塞がれてしまった。

「しー! 撮っちゃいけないことになってんだから!」
「ご、ごめんなさい…」
「おっさんたち、テレビ局の人?」
「そうだよ」
「あっちの会場にいる仲間が隠し撮りしてくれているんだ」
「何が特ダネになるかわからないからね」

 なるほど、と感心して二人は再び画面を見た。
 画面の映像はリングにてブロッケンマンとラーメンマンが戦っている。
 ブロッケンマンがラーメンマンに対してメリケンサックの凶器攻撃を行っていた。

「お、すごいぞ!」
「行こう、

 大人達が試合に心躍らせる中、をつれて離れようとしたがは留まった。
 それだけ試合に見入っていた。
 その胸に、違和感を覚えながら。

 続いてブロッケンマンは毒ガスを浴びせていた。

「…しってる」

、これ知ってる」

 これは今行われている試合だ。
 だからこれを見るのは始めてでなければおかしい。
 けれどはこれに見覚えがあった。

「見たの、あの日。確かに見たの」

 ―――オリンピックの最初の日に、ちゃんと一緒に。

「覚えてなかったんじゃないの。忘れたかったの。恐かったから、忘れたかったの」

 ―――だって、この次はたしか

「おまえたちも見ろよ!」

 ―――ラーメンマンっていう超人さんが

「ラーメンマンが中国拳法の嵐だ!」

 ―――そして



「…行かないと」

「おじちゃんのところに、行かないと…!」

 たまらず、は耳を塞いでその場に蹲った。
 体もわなわなと震え出す。
 の様子にも大人達も慌てた。

「し、しってる…。、しってる。この後どうなるか…!」
「お、おいっ!」
「知ってるの! 知ってる!知ってる!知ってる!知ってる!知ってる!」
!」
「助けないと…!助けないと…! おじちゃんをたすけないと…! じゃないと…!じゃないと…!」

 ―――シ ン デ シ マ ウ!!!

 花の匂いが香る。
 と、同時にザア、と突風が起きた。
 ここは室内だから風なんて起きる筈がないのに。
 それも、を囲うように。

っ!!!」

 訳がわからず大人達がから下がる中、だけがの腕を掴んだ。

 そして浮遊感。
 変わる景色。

 目の前ではリングで、ブロッケンマンがラーメンマンに技をかけられている。

「おじちゃんっ!!」

 はリングに上がり、その手を、白く綺麗な手を、伸ばした。
 けれど、無情にもその手は届かなかった。



 鮮血が、降り注いだ。

 はその場に佇んで。
 ただ呆然と立ち尽くして。



 血に染まった、二人の超人を目の前に。

「おじ、ちゃん……?」

 一人の超人の手から、大きな何かが落ちた。

 ―――何?
 ―――これは、何?

 目の前に落ちたのは
 これは

「おじ、ちゃ……」

 ―――真っ二つになった、ブロッケンマンの胴た

「おじちゃんっ!! おじちゃんっ!!!」

 は再びブロッケンマンに手を伸ばした。
 その手をぎゅっ、と掴む。

「やあだーーーッ!! 死んじゃあだめーーーェっ!!!」

 涙が溢れて、止まらない。
 いくら呼びかけても、ブロッケンマンはぴくりとも動かないから。
 それでも、信じては叫ぶ。

「おじちゃんっ!! おじちゃんっ!!! おじっ……」

 手に感じた圧迫。
 呼びかけが聞こえたのか、握っていたブロッケンマンの手が、の手を握り返していた。
 ブロッケンマンは空いてる方の手で、震えながらも胸のポケットに手を入れ、何かを取り出す。
 そしてに差し出した。
 白いのに、所々赤い染みがある手紙を。
 はその手紙におそるおそる手を伸ばし、触れる。
 そして、視界が割れた。





 が訪れたホテルの部屋にブロッケンマンがいる。
 ブロッケンマンの目の前の机の上には一通の手紙があった。
 それは最愛の息子への最後の手紙だ。

 あの時、がここを訪れた時に渡すつもりだったが同席したが早くに連れ帰ってしまったため叶わなかった。
 いや、それがなかったとしても出来なかっただろう。
 この手紙を託すということは、何故に託すのか話さなければならないから。
 自分がどうなるかまだ知らないであろうにそれを話すことは酷だった。
 この先、自分がに手紙を託す機会はない。
 あるとすれば最後だけだ。
 それならば。

 ―――頼む。

 ブロッケンマンは手紙を目の前まで持ち上げた。
 おそらく今の様子を見るであろうに向けて。

「息子に、Jr.に届けてくれ」

 そう、言った。




 試合終了のゴングの音が鳴り響く。

「ダメ、だよ…。そんな……」

 ―――そんな、遺言みたいな、言葉。

「だって、知らないもんっ! ジュニアって人のこと知らないもんっ!!」

 ―――生きて。
 ―――生きてよ。

「おじちゃんがわたしてよぉっ!! わたしてよぉぉぉっ!!!」

 ―――生きて、渡して。

「君、何してるんだっ!」
「降りなさいっ!」

 スタッフがブロッケンマンにしがみ付いて離れようとしないを無理やり引き離した。

「早く降り…!?」

 けれどは自分に纏わりつくスタッフ達をいとも簡単に引き剥がし、地に転がせた。
 スタッフ達は予想だにしなかった出来事に面食らってしまう。
 は再びブロッケンマンの元へ戻ろうとしたが、今度はに羽交い絞めにされてしまった。

っ!」
「はなしてぇっ!!」
「無理だっ! もう助からないっ!」
「やだぁっ!おじちゃんっ!」
「知ってたんだ、この人はっ! 自分がこの試合で死ぬってっ! ちゃんと覚悟してたんだっ! だから…!!」
「やだぁっ!! やだあぁぁっ!!!」

 その状態のままは会場から出て行く。
 ブロッケンマンへ手を伸ばして暴れるは離さなかった。
 ブロッケンマンが担架で運ばれ、が落ち着くまでずっとそうしていた。





 


亮祐:管理人です。超人オリンピックで一番書きたい話がやっと書けたー!ヽ(゜▽゜*)乂(*゜▽゜)ノ バンザーイ♪
翔:前回から六ヶ月も経過してるけどな。
亮祐:血生臭いシーンをいかに血生臭くするか考えてたら時間かかっちゃって…( =_=) トオイメ
翔:そんなくだらない理由かよ!
亮祐:オリンピックで一番書きたかった話、ファーターとちゃんの衝撃的別れのシーンでした。実は本文には書かなかったのですが、ファーターは真っ二つにされた後ラーメンにされ食われました。アニメ展開も含む夢小説です。
翔:そこまで忠実にしなくても!
亮祐:次はcriminalのラスト…になるかな? ラーメンマンとの初遭遇です。では続きます。


BGM:アニメ「キン肉マン」ゴング!決戦トーナメントの巻
    canta per me/NOIR ORIGINAL SOUNDTRACK T

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