キン肉マン原作&アニメ沿い連載夢小説「Amadeus」

sorrowfu expression

モドル | トジル | ススム

 突如として地上にズンと轟いた音と振動。

「わ〜、地震だっ!ナマズさんがお怒りだ〜〜〜っ!!」
「違いますっ! 何かが落ちたんですよっ!!」

 それに驚いたのは超人のキン肉マンことキン肉スグルとお目付け役のミート。

っ、起きろっ!っ!」
「ん〜…ジシン…?」

 そして少年とお昼寝中だった少女だ。
 この二人の子供、キン肉マンと不思議な出会い方をし、ひょんなことからキン肉ハウスに居候していた。
 窓から一人の男が姿を現す。

「わしだ」

 その正体はキン肉マンの父、キン肉大王ことキン肉真弓だ。
 体中傷だらけなのは恐らく着地に失敗してのことだろう。

「スグル久しぶりだの」
「パ・パ」

 キン肉マンの目がきらりと光った。

「私という実の息子がありながら、あ、我が子をキン肉星から追い出して〜」

 歌舞伎スタイルに身を包んだ。

「変わってタツノリという養子をとった、血も涙もねぇ父親がぁ、よくもおめおめと〜」
「これ、人聞きの悪いことをいわんといてスグルちゃん。良い話を持ってきてやったんだぞ」

 そんな会話をしている二人、特に真弓をはじっと見上げている。
 キン肉大王はすぐにその下からの視線に気付いた。

「ん? お譲ちゃんは……」
だよ。こっちはちゃん。おじちゃんはだーれ?」

 そらすこともなくじーっと見上げてくる少女の瞳。
 一点の曇も無い純粋な紫電の瞳。
 始めて見る人物に興味津々らしい。

「大王、この子たちは王子が一時的に預かってるんです」
「スグルが? そうか……」

 ミートの説明を聞いた真弓は二人と視線が合うよう腰を下ろした。

「わしはキン肉大王ことキン肉真弓。スグルのお父さんだ」
「おにいちゃんの、おとーさん?」
「キン肉マンの?」

 二人は一度スグルを見て、再び真弓を見る。

「スグルおにいちゃんはおとーさん似なんだね」

 にこりと満開の笑顔を浮かべた
 愛らしく、見てるだけで嬉しくなる、そんな笑顔。

「きゃっ」
「!」

 急に抱き上げられ、は少しビックリしてしまった。

ちゃんとくんといったな。わしのことは真弓おじちゃんと呼べばいいぞ」
「大王っ!? いくら何でも大王ともあろう方が真弓おじちゃんは……」
「構わん。わしは元々娘も欲しくてな」

 上機嫌になった真弓が嬉しくて、今度は二人とも微笑んだ。

「ところでパパ、いったい何しにここへ?」
「おお、そうだった。実は……」
「おこづかいあげてくれんの!?」

 真弓とミートとがずっこけた。

「まあ、レストランで飯でも食べながらゆっくり話そう」

 真弓は吹き出したお茶を拭った。





 レストランで食事を終えたミートと真弓とりょうとコウは食後のお茶を飲んでいた。
 キン肉マンだけが空になった器の元、牛丼を食べ続けている。
 情けなくて溜息を吐いたミートに続いて真弓が零した。

「せめてこういう所に来た時ぐらい牛丼はやめられんのかね、スグル……」

 ゴングが鳴った。

「牛丼一筋三百年、早いのうまいのやっすいの〜♪」
「解った解った!!」

 踊りだしたキン肉マンを真弓らが慌てて止めた。

「ところでスグル、おまえは超人オリンピックの日本代表に選ばれることになったぞ」
「なんと! この私が! 超人オリンピックの! 日本代表!」

 ポーズを決めるキン肉マンの脇からここぞと中野さんが超人オリンピックの解説をした。

「ちなみにわしは第10回チャンピオンだ。すごいだろ諸君!」
ちゃん、チャンピオンって?」
「一番ってことだろ?」
「本当!? うん、スゴイ!」

 チャンピオンの意味を理解したは純粋に真弓を尊敬の眼差しで見る。
 それに気を良くした大王は二人を地に下ろし、身体を熱くさせた。

「ヌオ〜、昔の事を思い出すと熱くなるわい」
「おーすごい」

 キン肉マンは何処からかすき焼きセットを出し、真弓の頭上に乗せた。

「コラ〜ッ! わしはコンロか〜〜〜〜っ!!」

 コンロ代わりにされた真弓は勿論怒った。

「しかし日本にはウルドラマンがいるのに、なぜ王子が代表に選ばれたんだろ……?」

 ミートが疑問を抱いた。
 こんなことを言うのもなんだがキン肉マンはダメヒーロー。
 だから超人オリンピックの代表に選ばれるなんてまずあり得ない。

「彼は前回の大会でイギリス代表のロビンマスクに敗れ去った。プライドの高いウルドラマンはそれを苦に今回は辞退したというわけなんだよ」
「んじゃー残りカスってワケか……」
「そんなことでもないかぎりおまえの出場は一生望めんわい」

 むーっとキン肉マンが少しばかりふてるが真弓の言う通りだ。
 その時、玄関の扉が誰かの手によって開かれる。

「ちょっと待った」

 現れたのはアメリカの超人テリーマンだ。

「テリーマンではないか」
「テリーマンっ!」
「テリーおにいちゃんっ!」
「ヘイ、キン肉マン。ちゃんとくんも元気かい?」

 は嬉しさのあまりテリーマンに抱きついた。
 二人が初めてここに来た時も、キン肉ハウスに居候する事が決まった時もテリーマンとナツコからも世話になっていたのだ。

「いつ日本にきてたの?」
「ついさっきさ。キン肉マンに用があってね」
「私に?」

 そういえばテリーマンは超人オリンピックの話をしている時に割り込むように声をかけてきた。
 おそらく超人オリンピックに関することなのだろう。
 けれどキン肉マンとはテリーマンがここに来た用が解らず頭を傾げている。

「キン肉マン、実は……」





「君は超人オリンピックに出場できない」

「「ええっ!?」」

 予想だにしなかった言葉にキン肉マンがすべって頭をゴンッとぶつける。
 も驚きの声を上げた。

「オリンピック運営委員会で今回の大会は日本抜きでやることに決まったんだ」
「「「「ええ〜〜〜〜〜っっっっ!?!?!?」」」」

 続いた言葉に今度は真弓とミートも合わせた四人の声が上がった。

「テリーおにいちゃん、どうしてっ?」
ちゃん……」
「ねぇ、どうしてっ? どうしてスグルおにいちゃんだけ出場できないのっ? おにいちゃん何も悪いことしてないのに……。どうしてっ? テリーおにいちゃんっ」

 今にも泣き出さんばかりに必死でテリーマンに詰め寄って問いただす
 優勝経験のある真弓の息子キン肉マンが何故出られないのか、には解らなかった。
 そんなを見てテリーの心が痛む。
 けれど一超人でしかない自分では何も出来ない。

 その脇で漫才をしていたキン肉マンとミート、どこからか現れた与作さんをキングギドラ化した真弓が怒っていた。

「まぁ、とにかく、深刻かつ真拳な問題だ……」
「どーでもいいけど、変化の激しい人ですね」
「よーしっ!」

 そこへ真弓が挙手をする。

「わしが委員会に行って話しをつけてこようっ!」










「おにいちゃん」

 肩で息をしながら巨大化していたキン肉マンを見つめる

「こんな所にいたんだね。おにいちゃん」
ちゃん……」

 そしてその隣りに座り込んだ。
 委員会から戻って来た父 真弓からやはりやはり無理だったと聞かされたキン肉マンは悲しさでキン肉ハウスを飛び出し、一人地下鉄へもぐっていた。
 これは昔からのクセで、今地球に居る者では真弓とミートしか知らない。
 なのに何故この子はここを探し当てれたのだろう。

「ねぇ、おにいちゃん」

 考えているとが声をかけてきた。

もね、悲しいときや淋しいときはよく一人になれるお気に入りの場所に行くの。すごくきれいな所なんだよ?」

 キン肉マンの目をじーっと、一度もそらすことなく見つめている。

「すっごく広いお花畑でね? いつでもいい匂いがするの。それからすごく大きな湖があって、真ん中の陸にすごく大きな木がはえてるの。大きさなんかこのくらい!」

 両手一杯に広げて大きさを説明するが可愛らしくて思わず笑みがこぼれてしまう。

「その木の下に居るとね、すっごく安心するの。大好きなおかーさんに抱っこしてもらって、なでなでしてしてもらってるみたいで。どうして悲しかったのか、さみしかったのか、忘れちゃうんだ」

 愛らしい笑顔を浮かべ、懐かしそうに話す。
 そのお気に入りの場所を思い出しているのだろう。
 本当にそんなに良い所なら行ってみたい。

「わたしも、ちゃんお気に入りの花畑に行ってみたいのぅ」

 そう漏らしたその時、ほんの少し、少女の困ったような悲しそうな、そんな表情。

「やはり、お気に入りの場所は自分だけの秘密かのぅ?」
「う、ううんっ、そうじゃないの! そうじゃなくて……」

 言うのを躊躇しているのか俯いてもじもじしている。

が教えなくても、おにいちゃんもいつか行く所だから…」

 キン肉マンにはその意味が解らなかった。
 自分は場所を全く知らないのに、いつか行く所。
 いったい何処なのだろう。

「キンちゃーんっ、ちゃーんっ、どこ行ったんよーーっ」
「王子ーっ、ちゃーんっ」
ーーっ、キン肉マーーンっ」

 ちょうどその時、向こうから見知った声が聞こえて来た。
 ナツコとミートと、それに真弓も居る。

「ナツコおねえちゃーーんっ、ミートーーっ、ちゃーーんっ、真弓おじちゃーーんっ、ここだよーーっ」

 気付いたは顔を上げ、その声に手を振りながら答えている。
 それを見ながらキン肉マンは先程まであれほど悲しかったというのに、何時の間にかそれが癒えている事に気がついた。
 きっとの話しと、その愛らしい笑顔が癒してくれたのだろう。
 ありがとうと、心の中でにお礼をいって、キン肉マンはこちらへ向かってくる仲間に目を向けた。





 その後、突如現れた前大会の優勝者ロビン・マスクのおかげもあってキン肉マンの超人オリンピック出場が決まった。





END


亮祐:管理人です。最初はこれからあげてたなぁ。sorrowful expressionは和訳すると“悲しい表情”。がキン肉マンに見せた表情です。お気に入りの場所に行きたいと話したキン肉マンにキン肉マンもいつか行く場所だからと返した謎は終盤の方で明かされます。 何話で終わるか解りませんが皆様お付き合いのほどよろしくお願いします。では今回はこの辺で失礼を。


BGM:アニメ「キン肉マン」日本代表になりたいの巻

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