キン肉マン原作&アニメ沿い連載夢小説「Amadeus」

幼き女神 降りし時  2

モドル | トジル | ススム

 月明かりに青白く染められた少女は心配そうな趣でキン肉マンを見上げている。

 柔らかそうな漆黒の髪。
 美しく、愛らしい顔立ち。
 可愛らしい服装。
 体格から予想するにおそらく10歳にもなっていない。

 そして瞳は白銀色の髪の女と同じ
 神秘的な色合いの、美しい紫電の瞳。
 少女の顔に女の面影が重なった。
 そういえば女の姿が見当たらない。
 確かにこの腕に抱きとめていた。
 それなのにもう何処にもいない。

 まるでこの少女と入れ替わったように。

「イッて〜〜〜っ」
ちゃん!」

 激突した少年の声を聞くや少女がキン肉マンの腹から降り、駆け寄った。
 その頭を撫でながら少年を見る。

「イタイ?」
「ヘ、ヘーキ。オレけっこう石頭だし……」

 少年の目尻には涙が滲んでいた。
 やはり相当痛かったのだろう。

「なぁ、ここって…」
「ここは田園調布の美波理公園ですよ」
「アンタ大丈夫?」

 ミートとナツコは怪我をしていないかと痛がる少年の頭部を見た。
 少女と似た髪形の少年。
 見たところコブは出来ているがそれ以外に怪我はないようだ。
 二人がその事に安心していると少年が顔を上げる。

 少年の顔を見た二人が固まった。
 見つめてくるその瞳の鮮やかな赤色。
 血と同じ赤。
 青白い闇の中でもはっきり見える程。
 酷く恐ろしく、美しい。

 それなのにミートもナツコも目を反らせなかった。

 一方キン肉マンも少女から目が放せなかった。
 背格好も身形も髪の色も全然違う。
 ただ瞳の色が同じだけだというのに、先程の女を思い出させる。

 テリーマンが少女に素性を訊く。

「ところで君達はどこから来たんだい?」
「あのね……」
「わかんねぇっ! 気付いたらここにいたんだ!」

 答えたのは少年の方だ。
 まるで姫を守る騎士の如く少女の前に立ちはだかる。
 警戒されているのは一目瞭然だ。
 家も、少年が空から落ちてきた事も、女が消えこの少女が現れた事も解らないとしか答えない。
 こうなっては自分達に出来る事は一つしかない。

「警察にいくしかないな」

 冷たいようだが警察に保護してもらうのが無難だ。
 二人も警察にならちゃんと事情を教えるだろう。
 キン肉マンも同意しようとしたその時足に重みを感じた。
 少女が足に抱きついていた。

「おにいちゃんといっしょがいい」
「へ?」
「な、何いって……!」
「おにいちゃんといっしょがいい!」

 少女の言い分に少年が困惑する。
 懸命にキン肉マンを見上げるその瞳。
 紫電の、瞳。

「じゃあ、こういうのはどうじゃ? 今夜は二人を私の家に泊める」
「ええっ!?」
「なんじゃ、ミート。反対か?」
「い、いえ、今夜はもう遅いですからその方がいいと思いますが……」

 ミートは正直、キン肉マン自らそんな事を言い出してくるとは思っていなかった。
 キン肉マンのことだからテリーマンかナツコに押し付けるだろうと思っていた。

「反対せんのならとっとと帰るぞい。じゃあな、テリー、なっちゃん」
「あ、ああ」
「さいなら……」

 子供二人の手を引いて帰っていくキン肉マンにテリーマンとナツコはただ見ているしかなかった。










 キン肉ハウスに戻って来たミートは客用布団などないことに気付いた。
 考えた結果、二つの布団に四人詰めて川の字に並んで寝ることになった。
 左からスグル、少女、少年、ミートの順で横になっている。

「そういえば、まだ二人の名前を聞いとらんかったぞい」
だよ。こっちはちゃん。のキョーダイ」
「ああ、そうだったんですか」
「……なぁ」

 話に参加していなかったはどうしても解らない事があった。

「なんで、オレらを泊めることにしたんだ?」

 子供とはいえ見ず知らずの他人。
 さっさと預けるなりしてしまえば良いものを、進んで泊めたりするなんて理解出来なかった。

「それは、ちゃんに一緒がいいっていわれたしのぅ」
「だからって泊まらせんなよ! こーいうのをやっかい事を引き込んだっていうんだぞ。今からでもケイサツてトコに……」
「やめて、ちゃん」

 きゅ、との手をが握った。
 こちらからではその表情は見えないが、の気まずそうな顔から察せられた。
 そしてこちらへ顔を向けたがもうそんな表情をしていた事など全く感じられなかった。
 が嬉しそうに話し始める。

ね、うれしかったの。泊めるっていってくれて。おにいちゃんと一緒にいたかったから。おにいちゃんのこと見てたから」

 見てた、というのはキン肉マンのファンだからということだろうか。

「それとね、本当のこというとちょっとこわかったの……。ダメっていわれたらって…。、ここのこと、何も、しらな……」
ちゃん?」
「…………」

 目がゆっくりと閉じられていく。
 やがてすうすうと可愛らしい寝息が聞こえて来た。

「眠ってしもうた」
「恐らく疲れてたんでしょうね」

 はというとキン肉マンとミートの事なんか無視して穏やかな表情で眠るに布団をかけてやると自分も布団を被る。
 それ以降は何を話し掛けても決して喋る事はなかったので二人も寝る事にした。





『なんで、オレらを泊めることにしたんだ?』

 夢の中での一言が響く。
 理由などない。
 ただ、と同じ紫電の瞳の美しい女。
 彼女を、何処かで見た事があるような気がした。
 それだけだった。





 


亮祐:管理人です。こっちも修正しました。誤字脱字全部修正しきれてるといいな。
翔:チェックしろよ!!
亮祐:今回最後の方でやっと名前変換でした。夢主1は好意的ですが夢主2はガードが固いですな。ガードが固い理由は後々判明します。次くらいに。
翔:早いな!
亮祐:ではこの辺で失礼を。


BGM:『あたしがアリスだったころ』/ALI PROJECT

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