泣かないで
大丈夫
あなたは一人なんかじゃないから
いつかあなたを囲うほど大勢の仲間が出来るから
だから泣かないで
泣かないで……
幻想的な白銀の月が浮かぶ、そんな夜。
「悪かったよ、キン肉マン」
「機嫌直して下さいよ、王子」
「そうや、キンちゃん」
「フンッ!」
公園に四人の人影。
「まさかそんな目にあわされていたなんて知らなかったんだ」
「まさかキン骨マンたちが……」
「大変やったなぁ」
テリーマンとミート、そしてナツコがキン肉マンことキン肉スグルをなだめていた。
今夜キン肉マンのためにパーティーを開くと言われ当人であるキン肉マンのみ招待されたのだが、実はそれはキン骨マン達が仕組んだ罠だったのだ。
罠に嵌ってしまったキン肉マンはリンチに合い監禁されたのだが、キン肉マンに好意を寄せていたオカマラスのおかげで脱出することが出来た。
キン肉マンは自分がそんな目に合っていたというのに助けるどころかドライブしていた三人に腹を立てていた。
謝る声を聞きながらキン肉マンは3人から少し離れ、夜空に浮かぶ月を見上げた。
いつもの黄色の月とは違う、白銀色の月。
満月から次の新月までの間の下弦の月。
ミートが来る前はよくキン肉ハウスの屋根の上で一人月を見上げていた。
月は例え自分のようなダメ超人でも差別する訳でもなくただ明かりを照らしてくれるから。
そうやって独りぼっちの寂しさを紛らわしていた。
ミートやテリーマン、ナツコと友が増えていくにつれ、そんなことはしなくなったが、それでも時折感じてしまう。
寂しい、と。
「ん?」
その時、ふわりと白いものが目の前に落ちた。
拾い上げて見ると、それは花びらだった。
何処からと思い再び空を見上げる。
月に、黒い点の様な物が見えたかと思うと、だんだんそれが近付いて来る。
それに気付いた3人も視線を上へと移した。
やがてそれは、月の逆行でも肉眼ではっきり確認できるまで降りて来た。
白銀色の月の光が、それを照らし出す。
それは人だった。
ただの人ではない。
顔をこちらに向け、ゆっくりと落ちてくる一人の女。
煌びやかに靡く白銀の髪。
雪のように白い肌。
それはまるで、地上に降りてきた女神。
やがて女はキン肉マンの頭上付近まで降りて来た。
キン肉マンは思わず女に手を差し出す。
差し出された両手に、女も両手を差し出した。
二人の指先が、そっと触れ合う。
それはとても不思議な感覚で、思わず細く白い女の手首を掴んだ。
そして自分の元へ引き寄せ、足に腕を回して抱き上げた体勢でこの腕に抱き止める。
今だ浮いているためか女の重さは殆どない。
間近になった女を見上げ、まじまじと顔を見つめる。
背丈より遥かに長い白銀の髪。
神秘的な紫電の瞳。
柔らかそうな薔薇色の唇。
雪のように白い肌。
うっとりするような花の香り。
この世の者とは思えぬその美貌。
その姿に、誰をも恍惚と魅了せしめるその美しさに、
誰も目が離せなかった。
ただ見惚れていた。
彼女の両手が、そっとキン肉マンの頬に触れてきた。
神秘的な色合いをたたえた瞳でじっと見つめてくる。
女に、しかもこんな美しい人に見つめられキン肉マンの鼓動は高鳴っていた。
この人を今抱きとめているのは自分だというのに。
けれどその時、 突然辺りに絶叫が響き渡った。
「でえぇぇぇーーーーーーっ!?!?」
「!?」
少年がこの女とは違いこちらへ向かって猛スピードで急降下して来る。
いくら超人といえどダメ超人であるキン肉マンが突然の出来事に対応できるわけがない。
案の定、少年が激突した。
「おわあっ!!」
キン肉マンの悲鳴と共に粉塵が辺りを舞い、その姿を隠す。
「キン肉マンッ!」
「王子ッ!」
「キンちゃんっ!」
テリーマンらは慌ててキン肉マンの元へ近付いた。
粉塵は今だ辺りを舞い、シルエットでしか姿を見せない。
「イツツ……」
キン肉マンは倒れこんだ身体を起こしながら目を開く。
舞う粉塵の中、女の姿は確認できない。
「大丈夫?」
そのかわり、耳にしたのは少女の声。
腹部に重みを感じた。
目を凝らしてみると腹の上に人影が見える。
やがて舞っていた粉塵が晴れた。
月明かりが、声の主の姿を照らしていく。
「大丈夫? おにいちゃん」
そこにいたのは一人の少女だった。
亮祐:管理人です。初代のキン肉マン原作&アニメ沿い連載夢小説。誤字脱字&アニメを含む内容に修正です。でもやっぱり名前変換はないです。
翔:やっぱりか。
亮祐:夢主の前に出てきた女性の事ですが今は勿論秘密です。後々明かされます。ではこの辺で失礼を。
BGM:『あたしがアリスだったころ』/ALI PROJECT