相変わらず食堂は泊り客が騒いでいた。しかも夜になっていたので泊り客以外の者も来ており、余計騒がしくなっていたのだ。
ピンクとカイはあまりの煩さに入り口で立ち往生していた。
「ほーんと、うるさいわよね。そう思わない?」
「そうですね」
カイの気分は薬の為か、すっきりしている。
だがそれとは裏腹に考えていることは重いことだった
―――ピンク殿は私が
―――爆殿を好きだということを知っている
―――じゃあ今は
―――今の想いは知っているのだろうか
カイの想いはもう『恋』という言葉では言い表すことが出来なくなっていた。
カイの心をグチャグチャにかき乱すほどのこの想い、『恋』といわずになんと言い表せばいいのだろうか。
―――息が詰まるほどの愛しさとか
―――胸を締め付けるほどの嫉妬とか
―――喉を掻き毟りたくなるほどの独占欲とか
「あの二人も相変わらずよ、ほら」
ピンクが指差したほうでは相変わらず爆がアリババに引っ付かれていた。
「――――」
カイは何故か爆の名を呟いていた。傍にいるピンクや自分でさえも聞こえないくらい暗い小さな声で呟いていた。
だが爆はまるで声が聞こえたかのようにカイの方へ振り向いた。
「カイッ! 見とらんで助けろっ!!」
―――ドクンッ!
爆の声を聞いた途端、体が脈打ち思わずその場に蹲ってしまった。
「おいっ!」
「カイッ!?」
「ヂィーーッ! ヂィーーッ!」
「ヂィーーッ!」
「ヂィーーッ! ヂィーーッ! ヂィーーッ!」
爆、ピンク、そして三人の聖霊達はカイの様子がおかしいことに瞬時に気付く。
―――体が焼ける
カイは無意識の内に懐に入れた薬を握り締めていた。
(―――飲みすぎると副作用で体が重く)
カイは何故、ピンクの忠告が頭に響いていたのかやっとわかった。
―――この薬を使えば
―――爆殿の自由を奪うことができる
―――ドクンッ!!
カイの体がまた脈打つ。
まるで『早くしろ』と言っているかのように。
だがカイの理性がそれを許さなかった。
―――やめろ
―――ビュンッッ!
―――ポカッ
「いった〜いっ」
懇親を込めて投げた物が様子を遠くから見ていたアリババとヒバナに命中した
「カイっ、なんでっ!?」
ピンクにはカイが一体何を投げたのかすぐ判った。
カイが投げた物、それは先ほど自分が渡した『精神安定剤』だったのだ。
「しっかりしろ、カイッ!!」
爆はカイの安否を気にしながら肩に触れる。
だがそれがいけなかった。
「うわあぁぁーーーッッ!!!」
その途端、カイは二人を振りのけてそのまま外へ走り去ってしまった。
「カイッ!」
「爆っ、まっ……」
爆はピンクの言葉を最後まで聞かずにカイを追いかけて行った……。
亮祐:暗いねぇ〜。そして次の地下室逝きとなった6ではもっと暗くなっていく……。
BGM:なし