「カイ、おきて。カイ」
「ヂィーッヂィーッ」
「ヂィーッ」
「……ん…………」
カイは誰かの声で意識を取り戻した。どうやら眠ってしまっていたようだ。
「どうしたのよ。アンタがなかなか起きないなんて」
声の主はピンクとバーンビ、そしてバクザンだった。皆心配そうにカイを見下ろしていた。
「平気……です……」
カイは目を擦りながら返事した。
夢を見ていた。暗闇を一人歩いていた夢だったと思う。
なぜそんなところを歩いていたのか覚醒した今となっては分からない。
「夕食の時間よ。みんなもうとっくの昔に食堂で待ってるけど食べる?」
窓を見るともう夕日は沈み、月が出ていた。
今宵の月はあの時、炎と爆の情事を見た時と同じ美しい満月だった。
「あ、ハイ。いただきます」
カイは立ち上がり、無意識の内に枕元にある何かを掴んで部屋を出ようとする。
「カイ、それ持ってくの?」
「え?」
それはさっき飲んだ残りの錠剤だった。
確かに夕食を食べるのにこんな物はいらない。
なのに何故、自分はこんな物を持ち出そうとしたのか。
だがカイはそんな考えとは裏腹に錠剤をそのまま懐にしまい込む。
「またいつ苦しくなるか分かりませんから」
あまつさえそんな言い訳をしてピンクと共に部屋を後にした……。
亮祐:ちょっと暗い、か。やっぱり・・・暗い話書くの好きだな。次からはもっと暗くなっていく……。
BGM:なし