「爆、爆ってば」
「ヂィーヂィーッ」
「う……」
爆は誰かの声で眠りから覚めたがあまりの眠気に目を開けることが出来ずにいる。
「早く目ェ覚ましなさいよ、ホラッ!」
―――げしっ
「キサマッ! 何をするんだッ!」
蹴られた痛みで起こりながら体を起こすとその主はピンクとジバクくんだった。
「『何をするんだ』じゃないわよっ! あそこで留守番してるもんだと思ってたのにどこにもいないから心配しちゃったじゃないっ!」
「ヂィーッ」
「ピンク、それに生物まで……」
怒鳴っているピンクと自分の肩に飛び移ったジバクくんを見て爆は驚いていた。
どちらの目も少し潤んでいたのだ。
「ピンク殿とジバクくんはほとんど睡眠をとらずに爆殿を探していたんですよ」
そう説明してくれているのはピンクの隣に居たカイだ。
「ピンク殿たちは帰ってから急いでテントをたててすぐ探しに言ったんですが12時になっても見つからなかったのでいったんテントへ戻って一度寝たんです」
「でも心配でほとんど眠れなかったみたいよ? 朝になって捜索を再開したらここで見つけたってワケ」
カイに続いて説明したのはリンだ。
「まさかこんな所にいたなんて思いもしなかったわっ。あまりに爆睡してたから死んでんじゃないかって思ったわよっ!」
「ヂィーッヂィーッ」
「そうか、悪かった」
ピンクとジバクくんに謝りながら爆は考えていた。
―――あれは夢だったんだろうか
―――それとも。
「どうしたの? アンタが素直に謝るなんて……」
「まさか熱でも出したんですかっ!?」
「キサマッ! また殴られ―――っ!!」
殴ろうと腕を振り上げたはずだった。
――が
「ど、どうしたんですか?」
爆は腰と腹を押さえ、項垂れていた。殴ろうとした途端、腰と腹に激痛が走ったのだ。
そんな爆にカイは武器である棒で防御しながら爆の身を心配していた。
「な、なんでもない……」
だが本当は何でもないなんて事はなく、あまりの痛みに腰と腹を擦っていた。
するとあることに気付いたのだ。
自分が今、青色の布を掛けられているのに下半身がスースーすることに。
―――下、履いてない
爆は酷い腰と腹部の痛み、掛けた覚えのない見慣れた青い布、そして下を履いてないという事実から一つの結論に辿り着いた。
―――昨夜のことは夢じゃない
―――オレは炎に
―――抱かれたんだ
それがわかった途端、脳裏に昨夜のことが鮮明に思い出され爆の顔は茹蛸のように真っ赤に染まってしまった。
「どうしたんですかっ!? やはり熱がっ!」
「アンタこんな布もって……あーーーーっっ!!??」
カイが急に真っ赤になった爆の顔を見てうろたえているとピンクが爆の体に掛かっている青い布を見て大声を上げた。
「これよく見たら炎のマントじゃないっ! なんでアンタが持ってんのよっ!?」
「そ、それは……なんでもいいだろっ!」
「何でもいいことないわよっ! 昨夜ここに炎がいたのっ!?」
「ええいっ! 引っ張るなっ!」
「なんでよっ! 引っ張っちゃいけない理由でもあるのっ!?」
「そ、それはっ……」
爆は答えなかった。いや、答えれなかった。
下をまったく履いてないなんて言えなかったのだ。
とにかく爆はピンクに取られないよう必死でマントを握り締めた。
「まあまあ、おさえてくださいピンク殿。爆殿にも事情があるんですよ」
「そうそう、それにそんなにカリカリすると炎に嫌われちゃうわよ?」
「……わかったわよ」
カイとリンの説得に折れたピンクはマントから手を離したがそれでも名残惜しいのかにマントを見つめる。
「それじゃあ、そろそろ針の塔へ行くわよっ!」
「はいっ!」
「そうだな」
―――もう、ここにいる必要はないから
「え〜。もういっちゃうの〜?」
「元々はすぐに旅立つ予定でしたから」
「ぶ〜。それじゃあせめてふもとまでお見送りさせてっ。それならいいでしょ?」
「いいですよ」
名残惜しそうなリンとカイの会話を聞きながら獏も立ち上がろうとする。
その時だった。
「イッ!!!」
不意に、腰に激痛が走った。
「ど、どうしたの?」
「ば、爆殿?」
「?」
三人は爆の声に驚いていた。
そういえば
―――下、履いてなかった……
「キサマら……先にいってろ……」
爆が腰を擦りながら出した答えはそれだった。
「はあ? まあいいけど……行くわよ、カイ」
「あ、ハイ」
ピンクはあまり気にせずにカイを連れて森の方へと向かっていく。
やがて2人の姿が森で見えなくなると爆は安堵の溜息を吐き、立ち上がろうとする。
「―――っ!! ……つっ……もう少し手加減できんのかアイツは……」
だが腰の痛みと秘所から溢れ出た精液と軟膏の感触で身悶えてしまう。
「とにかく、コレをなんとかせんとな……」
そしてマントの下から自分のズボンを探し出すとポケットからティッシュを取り出し、拭ける範囲の精液と軟膏を拭き取った。
「これでいいか……」
爆はふと拭き取ったティッシュを見てみる。
ティッシュには白い粘液と塊りが媚びれ付いていた。
―――これが今まで自分の中に入ってたんだ
途端、爆は真っ赤になってしまった。
真っ赤になりながらも拭き取ったティッシュをポケットに突っ込み、下着とズボンを履いた。
「これももって行かんとな」
じっと炎のマントを見詰める。
―――オレは死なない―――
―――生きて、炎にこれを返すのだから
「爆ーーっ! 早くしないと置いていくわよーーーっ!!」
「爆殿ーーーっ! できるだけ急いでくださいよーーーっ!」
「早く早くーーーっ!」
森から三人の声が聞こえてくる。
「キサマらオレを置いてくなーーーっ!!」
その声を聞いて爆はマントを急いでたたむと慌ててその場を後にした。
もしかしたら少年は
世界制覇より大切なものを
見つけたのかもしれない。
END
亮祐:持ってる人は分かるんですが次回はちょっと痛い話に・・・。
BGM:なし