ジバクくん「distress」

distress  1

モドル | トジル | ススム

 夜の森は昼間の森とは違う所があった。昼間の森には小鳥のさえずりと動物の鳴き声、それに風の音があったが夜の森には静寂と、暗闇のみが存在していた。
 爆は暗闇と静寂の森を歩き続け、森の外れにあるあのポプラの木下に辿り着いく。そして辺りを見回すとその場に座り込んだ。

 全世界一のGCになれ!
 爆―――オマエの夢を叶えてみろ!!!

 爆は炎の事を考えていた。

 ―――なんで炎はオレを後継者にしたんだ?
 ―――なんで炎はオレを助けたんだ?
 ―――なんで炎は?

「こんな所で何してるんだ?」

 爆は驚いて後ろへ振り向いた。
 何故ならその声の持ち主は今はここではなくゼロの世界に居るはずだからだ。

「こんな所に居ると風邪を引くぞ」

 だが後ろには肩に青いマントを着け、赤髪と蒼眼をした元・ファスタのGC炎が居た。

 「どうした?そんな顔して」

 そう言って炎は爆の隣に座る。

「キサマ……、なんでここに……?」
「俺か? ……この地を去る前にこの木を見ておこうと思ってな」
「……あのとき、なんでサーにいたんだ?」
「……たまたまあの辺りを歩いていたらお前がヤバそうだったからな」

 炎は何故か少し間を置いてから返答している。

「そういえば極目を会得したそうだな」
「なんで知ってるんだ?」
「たまたまあの山から見てたんだ」

 だが今度はハッキリと即答した。

「ん? じゃああのときの声はオマエだったのか?」

 爆には悩み事とは別に一つ疑問があった。それはコロビダルマと戦った時に聞こえたあの声だ。
 爆はあの声は炎ではないかと考えていた。

「いや、あれは俺じゃない」

 だが爆の考えはあっさりと崩れ去ってしまった。

「本当か?」
「なぜ疑う?」
「“夢に命を賭けられるやつは本物だ”なんていう奴はキサマしか知らん」

 爆はそう思ったからこそ炎ではないかと考えていたのだ。

「俺じゃない。誰がいったかは知っているが……」
「誰だ?」

 爆は炎の顔を数cm程の間近で見る。

「そのうち……分かる……さ……」

 炎は何故かオドオドと返答した。

「どうした? しゃべり方が少し変だぞ?」
「ああ。だい……じょうぶ、だ……」
「ホントに大丈夫か?」

 念のため爆は炎の額に手を当ててみる。

「……熱はなさそうだな」
「あ、ああ……」

 炎の顔は少し赤くなっていた。だが爆はそれにまったく気づかなかった。
 爆が炎の顔から手を離した途端、炎は爆を強く抱き寄せていた。

「炎……?」

 爆は炎行動の真意が分からないでいた。

「すまない、そろそろ行くよ」

 炎は爆を放し、立ち上がると森の方へ歩き出そうとする。

「まてっ!」

 だが爆がそれを止めた。

「なんだ?」

 炎は足を止めて爆を見た。

「最後に、一つだけ教えろ」

 爆は訊こうとしている。
 今まで悩みの原因だったあの事を。

「あのとき……なんでオレに、キスしたんだ?」

 爆は今までこれで悩んでいたのだ。
 爆は前にカイの故郷を襲い炎に倒されたトラブルモンスターの同族と遭遇したことがあった。爆は命を賭けて戦い重傷を負って気絶してしまった時、炎に助けられたのだ。
 爆を助けその場を去ろうとした時、炎は爆に口付けたのだ。
 その時、微かだったが爆には意識が合った為その事を憶えていたのだ。

「………………」

 炎は返答するのを迷っていた。理由を告げる事で爆を傷付けるのが恐いのだ。

 ―――自分が傷付くのは構わない
 ―――だが爆は傷付けたくない
 ―――守りたい

 だから炎は今までこの『気持ち』を、この『想い』を隠し続けていた。
 だがあの時、爆を助けたあの時に防衛は崩れてしまったのだ。自分の欲望を抑えきれなくなった炎は気絶していた爆に口付けてしまった。その時は何とかそれ以上はせずにその場を立ち去れたが『気絶した爆にキスをした』という事実は炎の胸に深く突き刺さっていた。

 ―――自分でも
 ―――あんなコトをした理由がわからない
 ―――苦しい
 ―――壊れたい
 ―――ならばいっそ
 ―――壊れてしまおうか

「そんなに知りたいなら教えてやる」

 炎は壊してしまうことにした。
 心の奥底から押し上げてくるこの『気持ち』を、この『想い』を伝えることにした。
 もしかしたらここにきた時、このポプラの木の下に居た爆を見つけた時から決めていたのかもしれない。

 ―――壊れてしまおう
 ―――壊してしまおう
 ―――これが自分にとって
 ―――一番良いことなのかも知れないから

「ああ」
「おまえのことが……」



「おまえのことが好きだからだ」

 炎は告げてしまった。
 心の奥底から押し上げてくる、この『気持ち』を、この『想い』を。

「はじめておまえに会った時から、ずっと……。それだけだ。じゃあな……」

 そして炎はまた森の方へ歩き出した。

 ―――これで良かったんだ
 ―――これで

  炎がそう思いながら歩いていたその時、誰かが後ろから抱きしめてきた。
 炎はまさかと思いながら後ろへ振り向き、抱きしめてきた相手を見る。
 そのまさかだった。

「爆?」

 抱きついてきたのは爆だったのだ。
 爆は無言のまま炎を後ろから抱きしめていた。

「すまない……」

 そう言って炎は爆の手を握った。

「すまない。どうやら俺はおまえを混乱させてしまっただけのようだ」

 ―――おまえを傷付けるつもりはなかったんだ
 ―――ただ壊れてしまいたかっただけなんだ

「違う……」

 爆はそう呟いて手を離す。
 炎はか細い声を聞いて縛の顔を見た。

「違うんだ……」

 爆は泣いていた。泣いているのを炎に悟られまいと俯いていた。
 だが溢れ出てくる涙は満月で照らされてしまい、炎にも見えていた。

 ―――爆が泣いてる

 炎は正直驚いていた。何故ならあの時、フンベツ山に居た初日人目を凌いで泣いていた爆が自分の目の前で泣いていたからだ。
 炎はどうすればいいのか戸惑っていた。

「爆……どうした? なぜ泣く?」

 そう言って爆をそっと抱きしめる。

「爆、泣かないでくれ。何も泣くようなことじゃないんだ。おまえに泣かれると俺も泣きたくなる」

 炎はまるで子供に言い聞かせるように「泣かないでくれ」と繰り返し呟く。

「すまない、本当にすまない」

 炎が謝っていた時、爆は今の『気持ち』を伝えるかどうか悩んでいた。

 ―――なぜだろう
 ―――なぜ今頃になって気付いたんだろう

 爆は前から、炎に初めて会った時からずっと考えていることがあった。

 ―――なんでオレは炎に執着してるんだ?
 ―――助けられたからか?
 ―――始めて夢を認めてもらえたからか?
 ―――いや違う
 ―――これはもっと別の感情だ
 ―――もっと別の

 爆はこの感情が、心の奥底に潜んでいるこの『想い』が判らないでいた。
 炎に対する『もやもやしたこの想い』が判らないでいた。

 だが今になって判ってしまった。
 やっと判ってしまった。
 炎の告白を聞いて『嬉しい』と思ってしまった時に判ってしまったのだ。

 ―――ああ、そうだ
 ―――オレは炎のことが
 ―――好きなんだ

 爆は気付いてしまった瞬間、泣かずにはいられなかった。

 ―――なんでだろう
 ―――なんで気付いてしまったんだろう
 ―――こんなことなら
 ―――気付かなければ良かった
 ―――できることなら
 ―――一生気付かないままでいたかった

 爆は後悔していた。
 この気持ちに気付いてしまった自分に後悔していた。

 ―――オレはどうすればいいんだろう
 ―――この想いをいってしまっても
 ―――いいのだろうか

 爆はどうすれば良いのか判らないでいた。爆は今まで憧れなら小さい頃に何度かあったが恋愛感情まではまだ一回も経験がなかったからだ。しかも相手は同性だったため、気付くのに時間がかかってしまったのである。
 爆がどうすればいいか悩んでいると炎は不意に手を離した。

「もういくよ」

 そう言って炎が歩き出そうとしたその時
 クイッとマントが引っ張られる。
 マントを掴んだのは爆だった。

「爆」

 炎が不思議そうに見ている。
 爆はその時、炎が行こうとしたその時にこの『想い』を伝えるかどうか決めてしまった。 

 ―――次に会える時が
 ―――いつになるか分からない
 ―――もう会えなくなるかも知れない

 爆は恐かったのだ。
 あのモンスターに殺されかけた時は炎がたまたま近くにいたから助けられたがもしあの時、炎が近くにいなかったらば爆は今頃死んでいたかもしれないのだ。

 ―――またあんなことがあったら
 ―――次はもう助からない
 ―――世界制覇の夢は叶えられなくなる
 ―――そして……炎にもう二度と会えなくなる

 爆は今、生まれて始めて大切な人を残して逝ってしまう事がどれだけ恐いか身を持って知った。

 ―――もう二度と会えなくなるかも知れないなら
 ―――いっそのこと

「炎……オレも……おまえのことが……好き、だ」

 そう言って炎を再び抱きしめる。
 緊張しているのか言葉が途切れ途切れになってしまった。
 告白なんて今まで一回もしたことがなかったのだ。

「爆……」

 炎は一瞬自分の耳を疑ってしまった。
 両想いだったなんてまさか夢にもおもっていなかったからだ。
 だが目の前には爆が自分を抱きしめているという真実がある。

「俺も……俺もおまえを愛してる」

 2人は抱きしめあい、唇を重ねた。





 


亮祐:そういやアニメでもサーの故郷襲ったんだったっけっ!?( ̄□ ̄;)!!それとも故郷とは関係ないサーっ!?( ̄□ ̄;)!!それに同種のモンスターだったっか!?( ̄□ ̄;)!!うわ〜っ!覚えてねーーーっ!!( ̄□ ̄;)!!つーかサーを襲った回は見忘れてたんだ〜〜〜っ!!!( ̄□ ̄;)!!
翔:落ち着け。


BGM:なし

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