辺りはもう真っ暗になっており、満月が出ていた。その満月のしたでは爆、カイ、ピンクの三人が住んでいるテントがある。そのテントの中では四人と一匹が夕食をとっていた。
「で、何でここにヒゲたちがいるんだ」
爆は少し不満だった。何故ならいつもは居ないフネンとフネンのもう一人の弟子リンが爆の隣で夕食を食べているからだ。
「しょうがないでしょう。“一緒に晩ご飯食べてくれなきゃ機嫌直してやんない”っていうんだから」
「まあ、いいじゃないですか。大勢で食べるというのも楽しいですよ」
「リンもカーくんと食べたかったしv」
「……今日だけだぞ」
結局、三人の説得に爆は折れてしまったのだった。
「珍しいわね。アンタが素直に従うなんて」
「毒キノコでも食べたんですか?」
―――ゴーーンッ!!
カイが訊ねた途端、カイの頭の火花が散り、鈍い痛みが襲ってきた。
爆が何かでカイの頭を思いっきり殴ったのだ。
「急に何するんですかッ、爆殿ッ!」
「そうよっ! カーくん大丈夫っ!?」
「失礼なことをいうからだ」
怒鳴るカイと心配しながら冷やしタオルを当てるリンに爆はそう言って味噌汁の音を立てながら口に流し込んだ。
「そういうピンク殿だって……」
「アタシは毒キノコまではいってないわよ」
カイの口答えにピンクは無情にもさらりと受け流した。
「そんな……。――って爆殿、先程はいったい何を使って私を殴ったんです……?」
カイは嫌な予感がした。
何故ならここには人の頭を殴れるほど大きな物はない筈だからだ。
もし、唯一あるとしたら……。
会は自分の中にある嫌な予感を否定しながら爆に質問をした。
だが
「ヒゲだ」
カイの嫌な予感は見事に的中していた。
「にゅーん」
「ひいいぃぃぃっ! 師匠ーーーッ!!」
「ちょっとっ! いくらなんでもヒゲで頭殴ることはないでしょうっ!!」
「師匠、大丈夫ですかっ!?」
拗ねてしまったフネンの仙人の瘤をカイとピンクとリンの三人が慌てて濡れタオルで冷やす。
「のーん」
機嫌が直ったフネンの仙人は再び縛の隣へ座るのであった。
「性懲りもなくオレの隣に居たがるヒゲだな」
「爆のこと好きなんじゃなーい?」
「ピンク殿、またとんでもないことを……」
ピンクの無責任な発言にカイはしかめっ面になってしまう。
「また……? 前にもあったのか?」
「な、なにもありませんよ……」
「なくはないだろう。吐け。さもないと……」
爆がカイを脅した途端、周りが暗くなり2人の所にだけスポットライトが当てられる。
「さっさと吐け。国のお袋さんも心配してるぞ」
「ううう……」
爆とカイは何故かお決まりの刑事と犯人の事情聴取という姿をしている。
「とりあえずこれでも食え」
「はい……」
だがカイが差し出されたカツ丼のフタを明けた途端
―――ポオオォォ……
中にはなんと爆の聖霊ジバクくんが入っており、手を掲げていた。
「エッ!」
「ちょっ……!」
「まっ……!」
だが三人の静止の声が入る前に
―――チュッドオオォォォンッ!!!
ジバクくんは自爆してしまい、テントごと吹き飛ばされてしまった……。
「やはりフッとんだか」
「『フッとんだ』じゃなーーいっ!!!」
爆がフッ飛ばしてぼろぼろにしたテントを見回しているとピンクが爆に怒鳴りつけてきた。
「どうすんのよっ! これじゃあ寝られないじゃないっ!! それにカイッ! アンタまで何のってんのよッッ!!」
「す、すみません……。つい……」
ピンクに怒られ、カイは頭を下げて謝った。
「寝床……どうしますか?」
「ここら辺の町には宿屋なんてないし……」
カイに聞かれピンクはしばし考える。
そしてある結論にたどり着いた。
「しょうがないわ。町まで行ってテントと寝袋を調達するしかないわね」
「えっ! 今から町へ行くつもりですかっ!?」
財布が入っているリュックを背負ったピンクにカイは驚いた。何故ならこの山を降りて一番近い町へ行く為にはどんなに急いでも二時間はかかる。町に滞在するのを三十分と考えても今は六時だから戻ってくるのは十時半ごろになってしまうのだ。
「しょうがないでしょ。それしか方法がないんだから。それとも何? こんなかわいい女の子を寝袋なしで寝させるつもり?」
「ドコにそんなかわいい女がいるんだ?」
「アタシよアタシっ! 行くわよ、カイッ!」
そう答えるとピンクはカイの長い耳を引っ張った。
「痛いですよ、ピンク殿っ! ――って、私もいくんですかっ!?」
「当然でしょっ! こんなかわいい女の子一人危ない目にあわせるつもりっ!?」
「だからどこにそんな女がいるんだ?」
「あたしだっつってんでしょッ!! 爆っ、アンタはここで留守番よっ! カイ、いくわよっ!」
「ですから痛いんですってばっ!」
「カーくんが行くならリンも行く〜」
ピンクは怒りながらまたカイの長い耳を引っ張り、山へ降りる道を進んでいく。
それを見てリンも急いで二人の後を追いかけていった。
「まったく、何で俺が留守番なんだ」
爆は不機嫌そうにその場にどかっと座り込む。だがしばらくすると爆は立ち上がり、ジバクくんを置いて考え事をするために昼間行ったあの森へと向かった。
「ヂィーヂィー」
「にゅーい」
その場では置いていかれた二匹がシルエットとなっていた……。
亮祐:夜のシーン2。さぁ、やっと炎さんが登場する。
翔:打ち込むのが大変だけどな。
亮祐:本でも書きましたがリンちゃんの喋り方は適当なんです。この頃はまだ録画してなかったので確認のしようが無くて・・・。すんませんでした・・・m(_ _)m。
BGM:なし