学校の帰り道、トラブルモンスターに襲われていた爆は最強の称号をもつファスタのGC「炎」に助けられ、GCの座を譲り受ける。
それが全ての始まりだった。
ここは3の世界・サーにあるフンベツ山。
フンベツ山の森を抜けた所には草原があり、その草原には切り立った崖がある。その草原で爆は腰掛け、一人景色を見ていた。
「爆殿ーーーっ!」
「……?」
爆は声がした方向、つまり後ろへ振り向く。
だが、そこには誰も居なかった。
「ここですよ、爆殿」
「――――っ!?」
訳が分からず、その声に驚いた爆は先程まで景色を見ていた方向へ再び振り向いた。
「どうしたんですか?爆殿」
「そうよ、アンタがこんなことで驚くなんて」
そこには爆の仲間(下僕)であるサーのGCカイ、セカンのGCピンクの2人が居た。
「オマエら、いつのまに……」
「テレポーテーションを使ったの。アタシのライセンスは『超能力』よ」
得意げに話すとピンクはカイを連れて爆の後ろへとテレポーテーションした。
ピンクのライセンスは『超能力』。
2人位なら同時に移動する事が出来る。
「んなことしなくたっていいだろう。無駄な力をつかうな」
「無駄な力とは何よっ、無駄な力とはっ! アタシはただカイに頼まれてしただけよっ!!」
「カイが?」
それを聞いて爆はカイの方へ振り向いた。
「はい、最近の爆殿はどうも様子がおかしいので。いつもの爆殿ならピンク殿がテレポーテーションしたことぐらいすぐ気がつくハズですから……」
「そういわれてみればそうよね、いつものアンタなら『極目はもう修得したからさっさと針の塔に行くぞ』っていってこんな山出てってるハズだもの」
しどろもどろと答えるカイに、ピンクは腕を組んで頷きながら同感している。
「ピンク殿、いくらなんでもこんな山とは失礼ですよ。もし師匠が聞いていたならスネてとがっていたところです」
師匠とはカイの武術の師匠で、サーの国一の名医でもあるフネンの仙人のことだ。
前に爆達は5年前にカイの故郷を襲い、炎に倒された同種のモンスターに遭遇してしまい、爆はそのモンスターを倒すため命を賭けて戦い重傷をおってしまったことがある。カイは重症をおった爆の傷を治すためフネンの選任が住むフンベツ山へ向かい、爆の傷を治してもらったのだ。傷を治してもらった爆はそこでどんな物質をも破壊する技『
極目』を会得することにも成功した。
爆のことだからすぐにでもこの山を出て針の塔へ向かうと思って旅立ちの準備をしていた会とピンクに本人は
―――しばらくここに泊まるぞ
と、そんなことを言い出したのだ。
しかも泊まってからもう一週間という刻が過ぎている。
「もうとがっとるぞ」
「え……?」
その言葉に2人は後ろにある森の方向を見た。
「にゅーん」
後ろの森ではフネンの仙人が先程のピンクの言葉に拗ねて尖っていたのだ。
「うわあぁぁぁっ! すみません、仙人〜ッ!」
「ちょっと、こんなことでスネないでよね〜っ」
二人は慌ててフネンの仙人を慰め始める。
「くだらん」
呆れた爆は向こうの森へ歩き出した。
「爆殿っ!」
「なんだ? カイ」
だがカイに呼び止められたので足を止めて2人を見る。
「悩み事があるなら、いつでもいてくださいね」
「そうよ。相談くらいならのってあげるわよ」
2人は揃って親指を立てた。
「……フン、世界制覇をする男がに悩みなどない」
だが爆はそっけない返事をするとまた森の方へ歩き出した。
爆は森の中を歩いていた。その森は小鳥の囀りと動物の鳴き声、それに風の音が聞こえないほど静かで穏やかな森だ。爆はこの森を気に入っている。この森は自然の音しか聞こえないため考え事をするにはとても好都合な場所だからだ。
爆は森の外れにある大きなポプラの木の根元に腰掛けた。
(悩み事があるなら、いつでもいてくださいね)
(そうよ。そうだんくらいならのってあげるわよ)
カイとピンクの声が爆の脳裏に響き渡っている。
「フン、下僕に相談なんかしてたまるか」
そう言うと爆は木の根本を枕にして横になった。
「それに、あの2人には話せんしな……」
―――炎に憧れてる、あの2人には
爆はあの時、カイとピンクに相談にのってやると言われたあの時に悩みを打ち明けてしまおうかと思った。
だが出来なかった。
爆の悩みというのはカイとピンクの2人が憧れている炎に関係していたからだ。それに話したとしても信じてくれるかどうか……。
やがて爆は無言のまま立ち上がり、その場から去っていった……。
亮祐:distress<前編>。これ去年の今頃発行してたんですねー。一年前の物をアップする
管理人も管理人だけど。
翔:オイ。
亮祐:実はこれちょっと修正してる所があるんで、もし本を持っていれば比べてみるのも面白いかも。
翔:とはいっても、分かんねーくらいほんのちょっとだけどな……。