「忘れるな」
放課後、図書室で読みながら本日借りる本を探していた嵐に斬が告げる。
冗談を言うようなではなく、真剣な表情。
「忘れるなって何を?」
そんな事を言われても嵐にはその意味が解らなかった。
何かを忘れたりはしていない筈だから。
「最近、涼華と仲が良いそうだな」
嵐の手からバサリと本が落ちる。
その音は二人きりの図書室に良く響いた。
斬の言う通り嵐と涼華の仲は急速に深まりつつあった。
周りから見ても二人の仲が近付きつつあるのは周知の事実だった。
斬が嵐の元へ近付き、顔を覗き込む。
「忘れるな。解っている筈だ」
斬の声が耳元で響く。
「どんなに足掻こうと、忌もうと、この事実は変わらない」
澄んだ鈴みたいな、
「逆らえばただ苦しみ、惨めになるだけだ」
白銀色の月の様な、
「おまえが涼華と結ばれる事は許されない」
微塵の曇りもない、氷の刃の様な、声。
「おまえと涼華は……」
気付けば斬は居なくなり、その場には嵐がただ立ち尽くしていただけだった。
足元には先程嵐が落とした本が落ちている。
拾おうと座り込みその本に手を触れる。
『忘れるな。解っている筈だ』
先程の声が脳裏に甦る。
『どんなに足掻こうと、忌もうと、この事実は変わらない』
―――解っている。
『逆らえばただ苦しみ、惨めになるだけだ』
―――そんな事が解らないほど僕は馬鹿じゃあない。
『おまえが涼華と結ばれる事は許されない』
―――それでも
『おまえと涼華は……』
―――それでも僕は君に恋をする。
本の表紙に水滴が落ちた。
温かいものが嵐の頬を、瞳を濡らしていた。
END
亮祐:管理人です。今回はいい加減何か書かないとと思い突発的に書いてみました。突発過ぎて訳わからない率100%ですな。
翔:解説しろ。
亮祐:時空軸は「涼華」から「旅立ち(仮題)」にかけて
。「涼華」後、嵐と涼華の中は深まっていきます。ですが今回それに気付いた斬が結ばれることは許されないんだと忠告したわけですな。ちなみに嵐は今回忠告される前から涼華と結ばれるのは許されないとちゃんと知ってます。それでも涼華が
好きなのです。当の涼華は何も知らず。でもしかしたら「旅立ち(仮題)」をばらして中に入れるかもしれません。寧ろ絶対そうなる。
翔:確定かよ。
亮祐:ではこの辺で。最後にこのタイトルを本日立ち読みした漫画からパクったことを謝りつつ。
翔:Σ(゜ロ゜;)!?
BGM:EMPTY DREAMシリーズシェアウェア第二弾「夜想曲・体験版」に使われているピアノ曲