「教団を陥れる異教徒だっ!! 早く捕まえんかっ!!」
教主コーネロと声と共に追う税の信者たちが走り出す。
彼らの狙いは前方のエルリック兄弟とロゼだ。
「追ってきたわ……」
「心配すんなっ! あんな奴らに捕まったりなんかッ……」
「兄さん、何か様子が変だよ?」
見てみると追いかけてきている信者達が一人、また一人と地面に倒れていっている。
しかもその度にしっかりニブい音までして。
「仲間割れか?」
「う〜ん?」
三人の頭上に?マークが浮かぶ。
今までの中で一番ニブい音が響いたかと思うとわずかに残っていた信者も倒れ、最終的にエドワード達を追っている信者は二人だけとなった。
「どうやらあの二人が他の奴らを蹴散らしてたみてぇだな」
「でもあの二人、どこかで見たことあるような……」
「あっ……。あの方々は……」
「おーいっ!」
追ってきた信者の内一人から発せられた声。
「おちびくーーんっ!」
「誰が豆つぶドちびかーーーーっ!!!」
その呼び方でエルリック兄弟も二人の事を思い出した。
この二人、先日とある店にて住民の怒りを買った観光者だ。
ここの信者の格好をしていたので思い出せなかった。
そして二人はぐんぐんスピードをあげ、三人の元へと追いついた。
「よっ、また会ったね」
「あ、はい……」
「何でテメエがいんだよっ!」
彼に返事するアルフォンスと対照的にエドワードは先ほどの言葉で怒っている。
「それはもちろん、じーさん(教主)のペテンを暴こうと思ってね」
エドワードに向けてふふふと楽しげに彼は笑う。
「元々俺もあのじーさんのペテンに興味があってね。だから信者として潜入したってワケ。君らみたいに正面から堂々と潜入するのは危険だしね」
彼の言葉にエドワードは更に怒りを募らせた。
「じゃあ、あの時にはもう『奇跡の業』の正体に気付いてたんですね。」
「そゆこと」
先日話した時、彼がコーネロ教主の『奇跡の業』を胡散臭いと言いのけ、わざわざ街の住民に聞こえるよう公言していたのはあれが『奇跡の業』でもなんでもないと気付いての行動だったのだ。
それに別れ際に言った面白いことというのは自分たちでそのペテンを暴くつもりだということだったのだろう。
「それにしてもどんな仕掛けがあるのかと思えば……」
「まさか賢者の石とはね」
『!?』
彼のその一言でエルリック兄弟に衝撃が走る。
「通りであんなことが出来たワケだ」
「おいっ! 何でそれを知ってんだよっ!?」
コーネロ教主が賢者の石を使っていたという事実はまだエドワードとアルフォンスとロゼの三人しか知らない筈。
もしかしたら先程倒した師兄のようにコーネロ教主に近いものであれば知っているかもしれないがこの二人のように入ったばかりの信者が知っているとは思えない。
「盗み聞きさせてもらったんだよ」
「キリで壁に穴開けてね」
「いや物理的に無理だろ、それっ!」
コンクリートだぞ、とつっこむエドワードに彼は愉快そうに笑った。
「もちろんキリは冗談だけどね」
「冗談をいえるような状況じゃないだろ……」
そんな彼に連れの青年は溜息を吐いた。
「それにしても母親の人体練成をしたというのに何とか生き延びて、国家錬金術師になるとはねぇ……」
「…………」
「そんな顔するなって。ちくったりなんかしないよ」
睨みつけるエドワードの顔を見て彼は怪しく微笑んでいた。
「ところでロゼちゃん、大丈夫? 怪我とかない?」
「さん……」
答えたロゼは今だ呆けていた。
「?」
「俺の名だよ。ちなみにこいつは」
彼、に言われ連れの青年は軽く会釈した。
「それはそうとほら、前方から来たよ」
指差した先を見ると前方に教団の信者が集まり始めているのが見えた。
「十数人ってところかな。ぬかるなよ?」
「そういうアンタもなっ」
「こっちだっ!」
「止まれ、そこの者っ!」
そこへ前方から信者達からの声。
「ほらボウズ、丸腰でこの人数相手にする気かい?」
「ケガしないうちにおとなしく捕まり……」
余裕満々の信者達が此方に声をかけたその時だった。
笑顔で走りながら両手を合わすエドワード=エルリック。
尋常ではない様子に信者たちは冷や汗をかく。
そしてエドワードが両手を話し、鋭い閃光が走ったかと思うと、
エドワードの機会鎧は鋭い巨大刃と化した。
『――――――っ!?!?!?』
それを見て声にならない悲鳴をあげる信者達。
エドワードの手によりばっさばっさと倒されてゆく。
「おっ、やるねー」
その様子を観戦しながらもまた信者たちを半殺しにしていた。(恐っ)
「くっ…手強いぞっ! 子供だからといって油断するなっ!」
その様子に待機していた信者達は恐怖を感じながらも戦闘態勢を取ろうとしていたが
「はい、邪魔ー」
「どけ」
アルフォンスとに顎を蹴られ、無残に倒された。
その後、エドワードたちは途中見つけた放送室のマイクと教会のスピーカーを練成して創った巨大スピーカーを使い見事コーネロ教主のペテンを公表した。
だが今回使われていた賢者の石は偽者だった。
「ロゼ、大丈夫かな……」
二人は教会に向かって押し寄せる群衆の中、町外れへと足を薦める。
ここにあった賢者の石が偽者だとわかった以上、滞在する意味など無い。
「心配せずとも大丈夫さ。彼女はまだ若いんだし、きっと立ち直ってくれる」
「そう、ですよね」
「――で」
「あんた達はいつまで一緒にいるつもりだ?」
目先にはまるでいるのが当たり前かのようにとがいた。
「何? 俺というのは嫌?」
「アンタらとはたまたま一緒に行動しただけだろっ! ずっと一緒にいる義理はねぇよっ!」
そうだ。彼らはたまたま行動を共にしただけの観光者。
これ以上一緒にいる意味など無い。
「つれないなぁ。おもしろそうだからついて行こうかと思ったのに……」
「来んなっ!!」
ぶうたれるにエドは怒鳴る。
これでは両方とも子供である。
「でもま、そこまでいうならしょうがないか」
残念と溜息を吐いてはと共に荷物を持ち直した。
「でも、さ……」
ぼそりと話し出すに反応したエドワード。
「また、どこかで会えたら考えといてね」
くすりと笑う。
そんな彼にエドワードは何も言えず俯いてしまった。
「じゃあね〜」
そしてとは夕日へ向かって去っていた。
「本当に不思議な人達だったね」
「ああ……」
「また、会えるかな?」
二人に手を振り続けるアルフォンス。
「さあな」
エドワードは、もう関わりたくないと思っていた。
END
亮祐:エドワードはまだ夢主に心を開いてない様子。まあ、あれだけちびちびといわれればなぁ…。
BGM:『メリッサ』/ポルノグラフティ