魁!!男塾

八連制覇後にて

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「全員帰るぞーーーっ!!」

『おーっすっ!!!』

 

 鬼ヒゲの言葉に返事をする塾生達。

 長かった八連制覇が今、やっと終ったのだ。

 

「なぁ、桃」

「はなしがあるんだが・・・」

「どうした?二人とも」

 

 そんな中、松尾と田沢は桃に話しかけている。

 

「なんつーか、その・・・」

「・・・がんばれよ、桃」

「?」

 

 先程の事(『松尾と田沢たちが天愕塔山につくまで』参照)で赤石の事を知った松尾と田沢は桃を励ましてやりたかったのだ。

 もちろん、そんなこと梅雨知らずの桃は頭上に?マークを浮かべるだけであった。

 

「オス、教官っ!」

「どうした、丸山っ!」

 

 塾生の視線が一斉にニ号生の丸山へと向けられる。

 もう少しで帰れるというのに、一体何なのだろうか。

 

「さきほどから赤石さんの姿が見えないのですが・・・」

「何?」

 

 その言葉で塾生達は周りを見回してみる。

 塾生で唯一白髪(はくはつ)なのだからすぐに見付かると思いきや、赤石の姿はドコにも見当たらなかった。

 

「三号生、さっきまで一緒にいたよな?」

「あの扉をくぐるまでは一緒でしたが・・・」

「なるほどね・・・」

 

 三号生の返答にはにやりと口元に笑みを浮かべる。

 三号生が言うあの扉というのは闘神像の下の壁にある扉以外にない。

 赤石は桃から吐き出された鍵を握り締めてあの扉へ向かい三号生達を助けたのだ。

 と、いうことは・・・。

 

「ちょっくら行ってくるわ。桃、、おまえらもこい」

「えっ!?」

?」

 

 は桃との首根っこを掴むと赤石が居る扉の方へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 その頃、扉の中にいる赤石はというと

 

「・・・・・・・・・」

 

 無言で三号生を助けるために使った鍵を真剣そうに見詰めていた。

 

「(何やってやがるんだ、俺は。だが・・・)」

「何やってるんだ?」

「―――っ!!」

 

 後ろから聞こえたの声に赤石は驚き、思わず鍵を落としてしまう。しかもそれを彼に拾われてしまった。

 

「ほ〜ぅ、桃が飲み込んだ鍵、ねぇ?」

 

 ニヤリと赤石に向けて不適な笑みを浮かべる

 最悪の状況だ。

 

「大方これを口に入れるか、どうするかで悩んでたんだろう?情けねぇなぁ〜」

「違うっ!俺はただっ・・・」

 

 そこまで言って赤石は慌てて己の口を塞ぐ。

 少し喋り過ぎてしまった。

 

「なんだ?舐めるかどうか悩んでたのか?同じことだろ」

「・・・・・・」

 

 図星、だった・・・。

 “何故わかるんだ”と赤石は泣きたい気分だ。

 

「好きなら好きって本人いやいいじゃねぇか。それだけのことだろ?」

「・・・いえるか」

 

 赤石には言えなかった。欲しいものは全て奪って手に入れる生き方しか知らずに生きてきたのだ。桃に対してはそんな真似はしたくなかったし、とはいえこの気持ちを伝える術も知らない。

 第一桃は男、同性なのだ。

 

「・・・赤石、それをいわずにずーっと先輩として、なんてことするんだったら今から俺はお前のことストーカーって呼ぶぞ」

「―――――っ!?!?!?」

 

 その言葉に赤石は驚いてしまった。

 ストーカーの意味くらい、赤石だってちゃんと存じている。

 

「誰がストーカーだ、誰がっ!」

「おまえ入院塔で桃と間接キスしただろう?」

「なっ・・・!」

「んでその後、ぐい飲みに口付けるか否かで一時間は扉の前にいただろ?」

「な、何故それを・・・!!」

「いっとくが盗み聞きしたワケじゃねぇぜ?入院塔の壁は予算の都合上薄ィんだ。それに実際聞いたのも俺じゃなくてだしな」

 

 女教官があの時隣室にいたのか?

 人の気配に気付かなかった事を、赤石は信じられなかった。

 しかもはそれだけでなく、もっととんでもない事を言い出したのだ。

 

「それからストーカーって呼ぶだけでなく、桃を俺のモノにしてやるよ」

「―――――っ!?!?!?」

 

 これにはもう、赤石もキレそうになってしまう。

 もっとも、もう半分キレている状態だが。

 

「きさっ・・・!!」

「文句はいわせねぇぜ?おまえはあくまでも先輩として見ているだけなんだろ?もっとも、告白するんなら別だけどな」

「あの女教官はっ!」

「俺の好色癖くらい知ってるだろ?」

 

 いけしゃあしゃあと言い放つに赤石は今にも斬岩剣を鞘から抜きそうな気迫だ。

 

「それが嫌ならとっとと告って押し倒しちまえよ。そうすりゃ一発だ」

「できるかっ!!」

「だったらここでいいからいえよ。そうすりゃ手は出さねぇでやる。ほら、どうする?」

「・・・ああ、いってやるっ!!俺は桃が好きだっ!!!」

 

 そう言って赤石は先程から大声ばかり上げていたので、肩で息をする。

 

(俺は、何てこと・・・!!)

 

 その途端、己が発した言葉に赤石は真っ赤になってしまった。いくら売り言葉に買い言葉で、本人がいなかったからよかったものの、これは恥ずかしすぎる。よりにもよってこの男の目の前で。

 しかもそれだけでは終わらなかった。

 のニヤリと口元に浮かべた笑みがそれを物語っていた。

 

「・・・だそうだぜ?

「――――――っ!?!?!?」

 

 その言葉に驚いた赤石はが振り向いた方を見る。

 

・・・」

「先輩・・・」

 

 そこには、頭を抱え込む

 そして立ち尽くす桃の姿があった。

 

「じゃ、あとは頑張れよ。いくぜ、遥」

「ああ」

 

 そう言うと二人はさっさと皆の元へ戻って行ってしまった。

 残された赤石は目の前にどうすればいいか分からないでいた。

 あれ程の大声だったのだ。聞こえていない訳がない。

 

「・・・先輩」

 

 沈黙を先に破ったのは桃の方だ。

 

「今の、本当ですか・・・?その、俺を好きだってこと・・・」

「・・・ああ」

 

 正直に、赤石は答えた。

 多分、このあと自分は振られるのだろう。下手をすれば今の先輩後輩の関係以下になるかもしれない。

 だからこそ赤石ははっきりと桃に言ったのだ。でなければ桃を諦めきれないであろうから。

 

「だがそれだけのことだ。なんてことじゃねぇ」

 

 そう言って赤石もここから出ようと扉のノブに手をかける。

 もう何の未練もない。あってはならない。

 その時だった。

 

「桃・・・?」

「あ、あの・・・」

 

 桃の手が、赤石の制服を掴んでいたのだ。

 気のせいだろうか、桃の顔が少し赤らんでいるように見える。

 

「始めきいた時は驚きましたが、「嫌だ」とか、「気持ち悪い」っていうのはなくて、その、俺にもよく分からないんですけど・・・嬉しい、です・・・」

 

 そう言って、真っ赤になって俯いてしまう桃。

 赤石はというと一瞬耳を疑い、己の頬をつねってしまった。

 

(「嫌だ」、「気持ち悪い」がない上に「嬉しい」ってことは・・・)

 

 =脈あり。

 頬の痛みとその公式を認識した途端、赤石は一瞬にして真っ赤になってしまった。

 

「も、桃・・・」

 

 そして赤石は桃の肩をガシッと掴む。

 

「いいのか・・・?」

 

 恐る恐る確認する赤石に桃はコクリと頷く。

 これはもう決定的である。

 だが赤石は石橋は叩いて渡る派だ。

 最終確認として、桃をそっと引き寄せてみる。

 

「・・・先輩」

 

 桃は目を閉じて、赤石の胸に顔を埋めた。

 最終確認もクリア。決定。

 思わず赤石は桃を力強く抱きしめた。

 

「桃・・・」

 

 そして二人は幸せをかみ締めるように、しばらくの間ずっとそのままでいた・・・。

 

 

 

 その頃、

 

「やっと結ばれやがったなぁ、あの二人」

「・・・なぁ、?おまえや私はともかく」

 

 

 

 

 

「何故全員が扉の前に集まって盗み聞きしているんだ?」

 

 

 

 

 

 そう、の言う通り、二人がいる扉の前では天愕塔山にいた塾関係者全員が集っていたのだ。

 

「江戸川が重症で動けない分、俺が務めないとな」

 

 丸山は何を務めるというのか謎である。

 

「よかったのぅ、田沢・・・」

「よかったのぅ、松尾・・・」

 

 この二人はそれしか言えない状態だ。

 

「あの野郎ーーっ!白髪頭の分際でーーーっ!!」

「『北●の拳』顔のクセにーーーっ!!」

「諦めるんだな、二人とも」

「やめとけって。あの赤石に適うわけないじゃろ」

 

 今にも赤石を殺そうとわめいている伊達と富樫を止めているのはJと虎丸だ。

 

「塾長っ!あれは不純交友ではっ!?」

「男塾で禁止しておるのは異性交遊っ!よって同性交友はよしっ!」

「「塾長〜っ・・・」」

 

 塾長の言葉に教官らも呆れている。

 こうして、中にいる赤石と桃の二人は何も知らぬまま、時間が流れるのであった。

 

 

 

 

 

END


翔:赤石と桃、別人じゃねぇかよ・・・。

亮祐:前に書いた『夢か、現実か』が100%別人ならこれは150、いや200%別人。特に赤石先輩・・・。丸山も丸山でどっか変 だ・・・。

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