聖北教会 |
概要 |
アルストール帝国全土で信仰されている『世界宗教』。聖十字教会が分裂して生まれた。帝国民の殆どは敬虔な聖北教信者であり、その徹底した布教により、ビックリするような辺境でさえ教会が建ち、司祭が派遣され、日曜にはミサが開かれる。そのため、帝国において教会の権力は絶大である。
教会は今も尚、数多の土着宗教を吸収してその勢力を拡大している。精霊宮は吸収、変形されたシャーマニズム信仰の成れの果てである。
教会の組織は法王(ポープ/Pope)を頂点とするヒエラルキー制度になっている。
教義 |
カトリックに近いが細部は異なっている。『主(唯一神)』は全て世界(この世界含む)の創造主にして、救世主。いつか救世主がこの世界にも訪れて、死の力を消滅させるとする。初代法王は『既に完成した世界』の使徒であり、『主』からこの世界に救いを知らせるためにやってきた。教会はその意思を受け継ぐもので、現法王は神と人の仲介者となっている。教会の目的は主の来臨の日まで、この世界に神の国を準備をすることである。
教会が最も忌避するのはネガティヴエナジーであり、ヴァンパイアを初めとするアンデッドは殲滅の対象になっている。当然、死霊術はタブーであり、人間が堕落した切っ掛け、罪の根源とされている。
破門 |
教会が聖北信者を強制脱会させること。破門された者は、教会の儀式に参加できなくなり、教会の息のかかった施設を利用できなくなる。その結果、貴族は出世の道を閉ざされ、村人は日々の生活すら危うくなるだろう。ただし、破門された者=異端(もしくは死霊術士、悪魔崇拝者)ではなく、直ぐに処刑される訳でもない。実力勝負の冒険者には、破門はあまり関係ないかもしれない。また、建前上、全てのアルス トール帝国民は聖北教徒なので、自然崇拝者であるエルフ国民であっても、改めて破門の宣告を受けなければ、教会の施設を普通に利用できる。
聖遺物 |
聖人の遺体や遺品のこと。そこには大きな力が宿っている。そのため、それを見せるだけで公開料を取れ、売れば高値で取引される(オキソイグ商会などが有名)。聖遺物の収集熱は次第に高まり、窃盗団や偽物が横行し始めた。中には、弟子が遺体の身体をバラバラにして、奪い合うことすらあった。法王庁も重い腰を上げ、聖遺物の売買を禁止する方針だ。
巡礼 |
聖者の墓や奇蹟の起きた地など、宗教的に意味のある土地へ礼拝しに行くこと。しばしば、巡礼者に病気が治癒したり、足が動くなどの奇跡が起きるため、民衆の巡礼熱は高まることになる。ただし、支配者側にとって、民衆にあちこち動き回れるのは面倒である。また、長旅は民衆自身にとっても、危険が高い(ゆえに、騎士団が同行する場合もあり)。そのため、教会は巡礼を推奨せず、黙認する程度である。
奇蹟 |
奇蹟とは実際のところ神聖魔法の一種である。『主』への信仰心によって、奇蹟を発動する。ゆえに、奇蹟の表層は他の魔法と変わりなく、一部の術は他の魔法にも存在する(聖刻の護りを使うプルードラゴンなど)。そのため、聖北教会は、列聖の必要条件として、通常の神聖魔法では扱えない、特別の奇蹟を要求する場合がある(死者蘇生など)。
教会で行われている『奇蹟の伝授』は、その金額を見ても判るとおり、当然ながら一般人に手の出るようなものではない。一般人にとって教会とはあくまで『お祈りをする場所』なのである。また、危険の大きい悪魔祓い(エクソシスト)用の奇蹟は修道士会で学ぶことになる。
トラキア聖典
聖十字教会の聖典には、この世界の歴史は書かれていなかった。彼らは別の世界からやってきた者たちだったからだ。ゆえに、人々は自分達のだけの聖典が欲しいと訴えた。教父たちはこの世界の歴史と聖十字教会の活動をまとめ、「外典」としてトラキア聖典を編纂した。偽り(且つ一般に知られている)獅子王神話が書かれているのもこの書である。
この外典は瞬く間に、本来の聖典以上に重視されるようになった。幾つかの教会はこの流れに強く反発、外典に無謬性は期待できないと批判した。これは教会分裂のひとつの切っ掛けとなった。
偽りの獅子王神話
初めに主が世界を創造し、その後に、7つの生命を創造した。それはドラゴン、巨人、エルフ、ドワーフ、竜人、オルクス、そして人間である。だが、ドラゴンの王が主に逆らって世界を荒らし、巨人と竜人とオルクスもそれに従った。人間は神の助けを借りて、エルフ、ドワーフと共にドラゴンの王を倒した。その時、人間はおごり高ぶり、死者の王国を築き上げた。主はそれを見て悲しみ、天から火を降らして王国を滅ぼした。
組織 |
法王庁
別名、法王聖座。法王が直接所属する組織。神聖都市アロントの統治機関でもある。法王はここで公会議を召集し、正当な教義を決定する。また、法王は枢機卿(カーディナル/Cardinal)によって決定され、前法王の按手によって叙任される。大抵、法王は高齢で叙任されるので、治世は十年前後しかない。
教会支部
各地方に存在する教会。司祭(ビショップ/Bishop)位にある者が聖北教会の長を務める。特に重要な教区は司教(アーチビショップ/Archbishop)が治める。ラーデックのエルンストもその地位にある。また、下級司祭(助司祭)は司教の手助けをする。教会は説教の場であるだけでなく、治療、集会場、紛争調停の場などにも用いられている。教会内は基本的に治外法権であり、教会の法によって裁かれる。貧富の差は教区によって激しく、何とか暮せている司教もいれば、開墾や民衆からの寄進によって多くの荘園を得ている司教もいる。
修道士会
教会の腐敗を憂い、神との健全な関係を築くために作られた組織。法王庁とは独立して存在している。ただし、法王に批判的な修道士会は異端として弾圧される。修道士たちは俗世間から離れて禁欲的に生活し、苦行に励んでいる。ただし、完全に孤立している訳ではなく、慈善活動や学問の研究発表、そして、アンデッド退治なども行っている。多くの高位聖職者は修道士会出身である。さらに、修道院の生計は、民衆の寄進と修道士自身の労働(農耕や牧畜などの自活や写本、
菓子とワイン作り、免罪符販売などの資金獲得)によってまかなわれる。そのため、権力や富と癒着しやすく、堕落と改革(初心に帰る)を周期的に繰り返している。
シャーレマン修道会
最大の修道会でオルランド王国に存在。国内の聖職者に絶大な影響力を持つ。近年は権力との癒着が激しく、腐敗の一途を辿っている。
ノルデ修道会
ノルデ派の修道会。かつて、ノルデは異端として処刑されたが、今は名誉回復している。高度な論理学による神学構築を得意とする。現在は古代文明の論理学を用いて、神の存在理由証明を行っているらしい。定住地を持たない都市型のネットワーク修道院である。
ウィクリフ修道会
聖十字教会に立ち返ることを訴え、法王の権威よりも聖典を重視している。また、聖典を他国語に翻訳しようと試みている。現在、異端の疑いをかけられており、組織の存亡が危うくなっている。
ベウラ修道会
謎の多い神秘主義的な修道会。聖十字教会の初期の奇蹟の復元、保存を目的とする修道会。聖遺物の収集にも力を入れている。その反面、教義に関しては異端的要素が多い。見逃されているのは、ヴァン
パイア殲滅部隊『白銀の黄昏(名称は時代によって変わる)』と繋がりがあるからだと言われる。
聖騎士団/Holy Knights
法王庁直下の公的武装組織。様々な種類が存在する。彼らには世俗の支配者はおろか、教会すら権力を行使できない。騎士団によっては、平民でも実力さえあれば加入可能であり、即座に貴族の身分を得る。運営資金は寄進と副事業(金融業など)で賄われている。
御堂騎士団/Temple Knights
最強の聖騎士団。聖南教会から聖地エシュルンを取り戻した猛者でもある。もとは聖地を守る私兵集団だったが、国王の支援で巨大化した。厳しい戒律に従っており、余剰な財産は全て修道会に引き渡される。秘密主義であり、聖遺物の収集に力を入れている。そのため、聖央修道院との癒着があると噂されるが、決定的な証拠は無い。近年、穏健派と過激派の間で対立があるらしい。
神官戦士/Holy Guard
武装した聖職者、教会を警備するために存在する。聖騎士団と異なり、個々の教会に所属している。また、異端審問官と同行することがある。帯刀は許されてないので、武器はメイスである。これは対人殺傷を嫌い、徴兵を拒否した聖十字教会の名残である。
異端審問官/Inquisition
異端審問の告発を主に行う聖職者。異端審問とは、宗教裁判の一種であり、被告が異端かどうか判断を下す。有罪とされた者は町外れで処刑されることになる。罪が軽い場合は、改悛して刑を逃れることができる。その際の罰金は領主の懐に入ることになっており、しばしば癒着問題も起きている。また、民衆にとって異端者の処刑は(残酷だが)一種の祭りであり、楽しい見世物になっている。
一応、裁判の体裁は整っており、自白を引き出す為の拷問は認められず、被告は証人を呼ぶこともできる。ただし、バルドゥアやルマイアのような粗暴な狂信者が、権威にものを言わせて手当たり次第弾圧するケースはある。
史跡局
教会の歴史研究と史料編纂、および遺跡の発掘調査を行う部署。過去の聖人や聖職者が残した遺産をよみがえらせる。聖遺物収集課も存在する。