呪いの翼 聖なる心

 

「・・・なんだったんだろうなぁ・・・あいつ・・・」

ハヤテはテンパの国を救った少年の事を考えていた。

「・・・あいつ・・・なんで他人のことなのに・・・あんなに怒ったんだ?あいつには全然関係ないことだったのに・・・」

代々、テンパの鳥人は短命・・・ハヤテもまた、短命である。

「・・・自分で決める未来・・・か・・・今までそんなこと考えた事なかったなぁ・・・」

「何がですか?」

「ぬあ?!・・で・・デッド・・・いきなり現れないでくれ・・・まじでびびった・・」

ハヤテは突然現れたデッドにそう言った。

「・・・何を・・・・考えていたんですか・・・?」

「?!べ、別に・・なにも・・・」

「嘘を付くのでしたら・・・強烈なのを一発打ち込みますよ・・・」

デッドはわら人形に五寸釘を打ち込もうとしながらそう言った。

「すいません!爆の事を考えてました!!」

ハヤテは青ざめながらそう答えた。

「やはりそうですか・・・」

「わかってんなら聞くなよなぁ」

「なにか言いましたか・・・?」

デッドはもう一度わら人形に五寸釘を打ち込もうとしてそう言った。

「すいません!もう言いません!!」

ハヤテはいっそう青ざめてそう言った。

「・・・私とライブも・・・爆君に助けられました・・・あの人はすごく他人に優しいですからね・・・私達のほかにも・・・助けられたGCがいます・・・セカン・・サー・・フォス・・ゴイ・・ロック・・セーブン・・エイトン・・ナイナイ・・テンパ・・・見事ですよ・・・今まで通った国全てのGCと国民を助けてます・・・あの人なら・・イレブスのGC・・ジャンヌも救って上げられますよ・・」

デッドは静かに淡々とそう言った。

・・・心を閉ざしてしまったGC・・・ジャンヌ・・・

・・・機械が支配する国・・・イレブス・・・

・・・ツェルブワールドで最も悲しい国と呼ばれるイレブス・・・

・・・人の笑顔が・・・消えた国・・・

 

・・・爆なら・・・あの悲しいGCも助けてやれるだろう・・・

 

「・・・そうだな・・・お前達はいつこの国を出る気だ?」

「明後日だそうですよ・・・アリババさんが言うにはもう少ししないと爆君の傷が治りきらないそうですからね・・・」

デッドはハヤテの質問にそう答えた。

「そっか・・・」

「私はもう寝ます。あなたも早く寝なさいね。あなたの傷だってひどいんですから・・・」

デッドはそう言うとテントに戻っていった。

「・・・寝れるのか・・・俺・・・」

「寝ないのか?」

「うわ!?・・ば、爆・・・どうしたんだ?こんな夜中に・・」

ハヤテは突然現れた爆にそう問い掛けた。

「・・少し嫌な夢を見たからな・・」

爆はハヤテの問にそう答えた。

「・・・嫌な夢ってぇ・・・いったいどんな夢なんだ?」

「・・・俺を育ててくれた人が・・・死んだ時の夢を見た・・・」

爆はハヤテの問い掛けにそう答えた。

「?!・・あ・・・わりぃ・・・」

ハヤテは慌てて爆に謝った。

「いや・・・謝ることはない・・・俺がしゃべったんだからな・・」

そう言った爆の顔には悲しそうに揺れる瞳があった。

「・・・なぁ・・・どんな人だったんだ」

ハヤテは爆にそう問い掛けた。

「・・優しくて・・強くて・・暖かかった・・・時折・・貴様のように背中に翼を生やしていた」

「え?!俺みたいな翼があった・・・?その人が・・・」

ハヤテは信じられなかった・・・鳥人でもない爆の育て親が鳥人のように翼を持っているのだと言う。

「ああ、俺が頼むとその翼で空を飛んでくれた・・・」

爆は思い出しながらそう言った。

「・・・その人はなんで死んだんだ?」

「・・・あの人は・・・俺をかばって死んだんだ・・・」

爆は悔しそうな表情でそう言った。

((ああ・・・だからか・・・俺達のようなあかの他人を助けてくれるのは・・その人を助けられなかった代わりに・・・俺達を・・・))

ハヤテはそう思った。

((育ての親に助けられた爆・・・爆に助けられた俺達・・・あの瞳の輝きは・・・育ての親が残した・・他人のために命を掛けて守るという・・・聖なる心・・俺にあるのは・・・命を削る・・・呪いの翼だけ・・・))

「・・・俺は貴様の翼が羨ましいぞ・・・」

爆はハヤテにそう言った。

「え?」

ハヤテは爆の言葉を聞いて少し抜けたような声で呟いた。

「・・・どこが羨ましいんだ?この翼は呪いの証拠・・・短命である・・・俺達鳥人の定め・・」

ハヤテは爆の言葉の意味を理解し、自分の疑問を素直に爆に問い掛けた。

「その翼はこの膨大な空を翔けることが出来る・・・俺達人間にはできない事だ・・・」

((あ・・・そうか・・・俺達鳥人は・・・最も空に近い存在・・・))

ハヤテは爆の言葉を聞いてようやく爆が言いたいことがわかった。

「だから・・・俺は貴様が羨ましいんだ・・・俺は空が好きだ・・・それに、あいつは言っていた・・・翼を持つ者には・・・必ず聖なる心があると・・・だから・・俺は貴様が気に入っている」

「?!・・・あ・・・爆・・・それって・・・」

「俺は貴様が好きだぞ」

「?!・・・・」

ハヤテは爆の言葉を聞いて赤面してしまった。

「お前はどうなんだ?」

爆はハヤテに聞き返した。

「え?!あの・・・俺は・・・俺も・・・爆の事・・・好きだぜ・・・」

ハヤテは爆の質問に赤面ながらそう言った。

「そうか・・・」

爆は少し安堵の表情を浮かべながらそう言った。

「貴様もこれからは前を向いて生きろ・・・後悔をしなくてすむようにな」

爆はさらにそう言った。

「・・・ああ」

ハヤテはそう言うと爆にキスをした。

「な?!いきなり何をするか貴様!!」

爆は赤面しながら怒鳴った。

「爆が言ったんじゃないか・・・後悔をしなくてすむようにって」

ハヤテは少し笑いながらそう言った。

「意味が違う!!」

爆は赤面したままそう言った。

「じゃあどんな意味なんだ?」

「?!・・・・・・・・」

ハヤテの質問に爆は押し黙ってしまった。

((この呪われた翼も・・・好きになれそうだぜ・・・))

ハヤテは爆の様子を見てそう考えていた。

 

この呪われた翼を羨ましいと言った爆・・・

・・・俺のことを好きだと言ってくれた爆

・・・誰よりも強く・・・優しい爆・・・

・・・お前の夢が叶うその時に・・・俺は・・・お前と共に在りたいと思った・・・

・・・もぅ・・・お前を離さないから・・・覚悟しろよ・・・

 

 

                                                                                                                              END