魁!!男塾

松尾と田沢たちが天愕塔山につくまで

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 これは、万人橋の下の川に流された松尾と田沢が、合流した塾長や教官、そして二号生達と共に桃たちの元へ向かっていた時の出来事である。

 

 

 

 

 

「大丈夫かのう?遥教官……」

「休んだほうが……」

 

 松尾と田沢は教官の遥の身を案じていた。

 それもその筈。

 遥の顔は青く、足も覚束ないといった様子で皆と歩いていたのだ。

 

「私の心配は不要だ。桃たちの心配でもしてやれ」

 

 

 

 そう言われても心配しない訳にはいかない。男の格好をしているが実は、遥教官は男塾唯一の女なのだ。(ちなみにそれを知っているのは 極少数である)

 周りの者たちと比べ体力の差は歴然である。そんなこと、遥教官も分かっている筈なのに以前と休もうとはしない。

 

「『あくまでも男として、皆と対等に』というワケね・・・。分かりやすいねー、おまえ」

「いいだろう、別に・・・」

 

 隣の真教官はそんな遥教官の気持ちをよく存じていた。

 いつ、どんな事がきっかけで遥教官のことがバレるか分からない。だからこそ遥教官は出来るだけ皆と同じ対等であるように励んでいるのだ。

 

「オス、塾長っ!あと如何ほどで到着いたしますかっ!?」

「あと30分といったところか・・・」

「だそうですっ!遥教官がんばってくださいっ!」

「おまえたち・・・」

 

 今ここで遥教官に肩を貸せば、遥教官は傷付く事になるだろう。だから田沢と松尾は励まししか送らない、送れない。

 その事が分かっていたからこそ遥教官は二人の励ましが何よりも嬉しかった。

 

「親父、俺からも質問」

「申してみい」

「「?」」

 

 どんな質問をするのか気になった松尾と田沢は真教官と塾長を見る。

 

「・・・結局のところ、親父はどう考えてるんだ?」

 

 その言葉に、塾長は微かにヒクリと肩を震わせる。

 松尾と田沢にはその言葉の主旨すら分からない。

 

「いってやろうか?本当は勝敗ついてもらいたくねぇんだろ?桃と邪鬼の勝負」

「真、つまりそれは『両者とも死亡』ということか・・・?」

「ええっ!?」

「塾長っ!?」

 

 主旨を理解した松尾と田沢は驚いて真教官と遥教官、そして塾長を見比べた。

 邪鬼はともかく、桃が死ぬなんて絶対に嫌だ。

 

「あれほどの大物対決だからな。一階で勝敗がついちまうなんざもったいねぇんだろ?どうせならあの二人には決着がつかねぇ勝負を何度も繰り返してほしい。違うか?」

 

 真教官の言葉の松尾と田沢は“ほっ”とあんどのためいきを吐く。  しばらくして塾長の口が開いた。

 

「・・・真よ、そう思っているのは貴様のほうではないのか?」

「何だ、バレちまってたか」

「何年親子でいると思っておる。おもしろそうな勝負を観戦したがるのは貴様の癖じゃて」

「かなわねぇな、親父には」

 

 “ああ、これがこの二人なりの親子の会話なんだな”と田沢と松尾は納得した。

 何故かは分からないがこの二人のツーショットを見かけたことがある者は少ない。ましてや会話を聞いたものとなるとゼロに等しい。

 それを思うと得した気分にもなれたのだ。

 

「当たり前だろう・・・。おまえの父親で、男なんだからな・・・。かなうワケがない・・・」

・・・なぁ遥、男だからってかなわねぇとはかぎらねぇと思うぜ?ほら」

「「「「「「「???」」」」」」」

 

 真教官は後ろのニ号生を指差していた。

 “何だ?”と思い、皆が見てみると・・・

 

「赤石さ〜ん、大丈夫ですか〜ぁ・・・?」

「あともう少しっすよ〜・・・」

「しかし何時間歩いてんだ・・・?これ・・・」

「早く着かねぇかなぁ・・・」

「つーか休みて〜ぇ・・・」

「貴様ら・・・」

 

 江戸川、丸山といったニ号生面々が遥教官よりもはるかに疲れ切っており、挙句の果てに“休みたい”などと抜かしていたのだ。

 平気なのは赤石、唯一人しかいない。

 

「み、見事にヘロヘロ・・・」

「ほんとにニ号生かこいつら・・・」

「これじゃあ『赤石以外のニ号生は全員小物だ』といわれてもしょうがねぇなあ?親父」

「わしが男塾塾長江田島平八であるっ!」

「・・・・・・」

 

 この現状に松尾、田沢、真教官は呆れ塾長に至ってはお決まりの台詞で誤魔化している。遥教官も、無言だ。

 

「こりゃあっ!ニ号生っ!」

「なさけないぞっ!」

「いいかげん・・・」

「てめえらーーーっっ!!!」

 

 鬼ヒゲ、鉄カブト、飛行坊をはねのける大声を発したのは遥教官だ。

 

「いい加減にしやがれこのニ号生どもっっ!人が無理して歩いてんのに先にバテてんじゃねぇよっっ!!そんなんだから一号にまで小物だっていわれんだよああっ!?」

『オ、オッスッ!!!』

「返事だけなら誰でもできんだよっっ!!わかったならしゃきしゃき歩きやがれっっ!!このタイヤについたガムのカスどもがーーっっ!!!」

『オーッスッッ!!!』

 

 遥教官の脅しに疲れきっていたニ号生達は慌ててシャキッと歩き出すのであった。

 

「あいかわらず恐いな、あの教官は・・・」

「ま、あのくらいの度胸がねぇと女の身で男塾にはいられねぇな」

「ま、真教官・・・!?」

「いって・・・!?」

 

 真教官の発言に二人は驚いてしまった。

 遥教官の秘密がバレればクビになると言っていた筈。

 それなのに、こんな公衆面前。しかも赤石先輩の目の前で・・・。

 

「心配すんなって。赤石は遥のこと知ってるからよ」

「というより赤石や邪鬼、死天王には事前に伝えていたからな」

「遥教官、もう大丈夫なんですか?」

 

 田沢が見てみると遥教官は息切れも止まり、呼吸も正常に戻っていた。

 

「ああ。さっき二号生を怒鳴ったら妙にスッキリしてな」

「そ、そうですか・・・」

 

 今までのバテようはストレスだったのだろうか・・・?

 思わず脱力してしまう田沢なのであった。

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