最終回その2:(タイトルなし)

[初出:「小学四年生」昭和47年3月号]

「ドラえもん!いつものようになんか出してちょちょっとたすけてよ。」

 のび太はいつもの調子で自分の部屋のドアを開けると、そこにはドラえもんだけでなくセワシもいた。

 セワシはのび太に言う。「じつはね、そろそろドラえもんを……。」

「まった!ぼくからあとでいう」とセワシの言葉を制するドラえもん。

 セワシは「きっとだぜ」というセリフを残して、タイムマシンで未来へ帰っていった。

 妙にしょんぼりした表情のドラえもん。

 のび太は「どうしたんだい」と一応は気遣うが、いつもの調子で「友だちとあしたサイクリングに行くことになったんだ。実はぼく自転車にのれないの。なんとかしてよ」と甘えると、ドラえもんは大声で怒鳴りだした。

「どうにもならないね! どうしてそう人にばかりたよるんだっ! ぐずぐずいってるひまに、練習したらどうだっ!!」

 びっくりして、慌てて部屋を飛び出すのび太。

 「へんなの。ばかにきげんが悪いや。だいじょうぶ。いざとなればきっとなんとかしてくれるさ。いつもそうなんだ。」

 そう呟くのび太を陰で見ていたドラえもんは「まるっきりぼくにたよってる。やっぱりこれじゃだめだ。」とのび太に対して不安な気持ちを抱く。

「よし!!心をおににしていおう!!」

 そう決意したドラえもんはのび太のところへ走るが、のび太も同時にドラ焼きを持って ドラえもんのところへ走り込んできた。

 ドラえもんの表情は一転して「どらやき!!」とよだれをたらす。

のび太「きみ、すきだろ。ぼくのぶんも食べていいよ。」

ドラえもん「わるいなあ」

のび太「いやいや、ふだんおせわになっているからおやつくらい。もし、この世にきみがいなかったらと思うとぞっとするよ。とてもぼくなんか生きていけないな。」

 それを聞き「と、とてもいえない、みらいの世界へ帰るなんて…。」と陰で涙を流すドラえもん。

 ドラえもんがそばにいると、のび太は頼り癖がついてダメな人間になってしまう。

 それで、ドラえもんは未来の世界へ帰ることになったのだ。

 そこでドラえもんはセワシと相談して、ある策略を練る。ドラえもんが壊れそうなふりをして、修理のために未来の世界へ帰るという事にすれば、のび太も納得するのではないか、と。

 早速、「くるしい、死にそうだあ!!」と壊れたふりをするドラえもん。

 それを見たのび太は「ドラえもん、こわれちゃいやだ。」とドラえもんに泣きつく。

 そしてセワシに「みらいへつれてってなんとかなおしてやって!!」とお願いした。

 そこでドラえもんは「だけどぼくがいっちゃったらこまるんじゃない?」とのび太に言うと、のび太は言った。

「こまるにきまってらい、でもきみが元気になるためならどんながまんでもするよ。」

 そののび太の言葉を聞いたドラえもんは感激で大泣きし、のび太に「こわれそうというのはうそだ」と打ち明ける。

 のび太に自分の力でなんでもできる強い人になってほしい、それで未来の世界に帰るんだということを、正直にのび太に説明した。

 するとのび太は、「わかった。ほんとにそのとおりだと思う。やってみるよ。ぼくひとりで、自信はないけどがんばるよ」とドラえもんに言った。

 ドラえもんがいなくても頑張るという決意を見せたのだ。

のび太「きみのことわすれないよ。」

ドラえもん「ぼ、ぼくだって……ククク。」

セワシ「さようならあ。」

 ドラえもんとセワシは未来の世界へ帰っていった。

 ドラえもんが帰った後、のび太は自転車の練習をはじめる。

 フラフラした運転に何度も転び、アザだらけの姿にのび太のママは「むりしないでやめたら?」と言うがのび太は言った。

「だ、だいじょうぶ……イテテテ。ドラえもんとやくそくしたんだ。」

 その様子を未来の世界から見守り、応援するドラえもんとセワシ。

「がんばれ、がんばれ!タイムテレビでおうえんしてるぞ!!」

 

おわり